01
何の取り柄もない高校1年終わりかけの夏、別に高校ライフをエンジョイ
したかった訳でもなし、
特別仲の良い友達がいた訳でもなし、少し期待していた彼女も出来ないまま
憂鬱な日々をただ悶々と……
家が神社と言う事もあり、家業を手伝っていると…ふと、だだっ広い境内の中の
森に釘付けになった。
『_______君。やっと目を合わせてくれた!
遊ぼう…また昔みたいに、手を繋いで遊びましょう…?』
幼い顔立ちに、やはり子供用の浴衣、顔の横には嫌に目立つ狐面
向こうは嬉しそうな顔をすると
森の前にある鳥居の手前まで可愛らしい下駄で音を鳴らしながら
カランカランと歩いて来て小さな手で手招きをする。
『…早く早く、此方においで…早くしないと時間が無くなる。
_____君!遊びましょう?』
「お前は…誰だ…?」
行きたくないのに足が勝手に少女の方へ誘われる…掃き掃除をしていた
竹ボウキも、カランと強い音を立てて地面に叩きつけられた。
袴を着ているのにも関わらず、足はだんだんと少女の居る鳥居へと
早足になっていく。
「…嫌だッ止まれ、止まれ止まれ!」
勝手に動く足を手でバンバンと叩くけれど、歩き出した足は全然止まらない。
『…やっと戻って来てくれた…おかえり。』
鳥居の中に足が入った瞬間今までそこから動こうとして来なかった少女が
子供の力とは思えないほどの力で、俺の腕を引っ張って来た。
「ぅぐ…?!イタッ…離…せっ!!」
森の方へ入ると何かいけない気がして懸命に少女の力に逆らったが、
少女は涼しい顔のまま、俺の事を面白がっている様に見えた。
「…もぅ、ムリッ…!」
俺が力を緩めた瞬間聞き覚えのある声と共に、少女の側とは反対に力強く
俺の腕を引く人が視界の端に見えた。
《神永…ッ!》
「…貴崎……?!」
ズドンッと鈍い音がして尻餅をつくと、森の方にいた少女は一瞬悲しい顔をして
狐面を被り鈴の音を響かせながら森の中に消えていった。
《…お前何やってたの?あんな所で一人で、、パントマイムの練習とかかw?》
「え…?!今、女の子が…」
《は?お前なぁ、真面目な奴だと思って昨日は親友の俺には冗談くらい言えよって
笑ってやったけど、女の子だぁ?お前一人だったじゃんww神永が冗談いった〜w》
「…」
『…____君!一緒に遊ぼう…遊びましょう?』
あれから毎日同じ夢を見る少女に誘われて森で遊ぶんだ。
彼女は何者なんだ…?