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1話 始まりの扉

「なぁ、改めて聞くけど上手くいくのか、これ」


 大きな扉を目の前に佇む青年は深い溜め息の後にそう呟いた。

 その扉以外何もない空間、明かりはないのだが不思議と目の前にある無機質な物体は感知できた。当然周りには誰もいないがすぐに言葉が返ってくる。


「それはお前次第だ」


 どこからともなく聞こえてきたその言葉はもう何度も聞いたものなのだろう。それを聞いてから再び出た溜め息と仕草が青年の期待した回答とはまるで違うことを表している。

 髪をかき上げる彼の表情には若干の緊張と不安が垣間見えた。一方で説明できない不思議な現実を目の当たりしている割にはどこか上手く順応できている彼の適応力の高さも見て取れる。


「でもたしかに自分次第か、どうなるかなんて」


 誰に言うわけでもなく彼は呟く。

 これから起こることは恐らく、今まで体験したことがないものばかりだ。そんな状況下で目的を果たせるか、否か。

 結局、自分自身の力でしか自分の願う道は歩めない。だが、これまでにあった様々な物事に対して真摯に己と向き合い挑んでこれたのか。結局周りに流されてただなんとなくを繰り返してきたのではないのか。そして、それが恐らくこれからも続いていくのではないか、漠然とそんな予感がいつも自分の中で渦巻いていた。

 変わらない日常、変われない自分。それが幸か不幸か、日常は大きく変わった。そしてこれを機に自分も変われるのではないか、己が力で、意思で、しっかりと願う道を歩んでいけるように。

 淡い期待が高まっていくのを青年は手足の震えで実感した。


「さぁ行くぞ」


 あの声が聞こえる。不安、恐れ、恐怖、非現実な状況下にいるにも関わらず、不思議と頭は冴えていた。失敗すれば死んで、成功すれば生き返る。

 今、青年は死んでも生きてもいないどっちつかずの状態にあった。目的は生き返る、そのためには7つの地縛霊魂とやらを集める必要があるようだ。

 扉に手をかけ、ゆっくりと腕を前に押し出す。青年、小柳コヤナギ 居世イヨは始めの1歩を踏み出した。これから始まる途方のない旅路への第1歩を。



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