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剣製の龍騎士  作者: 書砂糖
一章
10/20

第十話


 そうですね。まず何から話しましょうか……あ、本当にこのお茶美味しいですね。姫が好きになるのも頷けます。あ、このお茶の事ですよ? 間違っても自分が好かれてるなんて勘違いはしないでくださいね。……え? 早く話を進めろですか? せっかちですねぇ。さてはホモですか!? あぁそんなに怒らなくても〜冗談じゃないですか場を和ませるための冗談です。……そんなゴミを見るような目で見つめないでくださいよぉ。照れちゃいます。どうやら本格的にイライラし始めておりますので真面目に話させていただきます、ええ真面目にやりますとも。


 まずはこの里の成り立ちから……ちょ、その物騒なのしまってください! 真面目に話してますって! ここから話した方が全体像がわかりやすいかと思ったんですよ! ったく、本当にほ……げふんげふん。じゃ、改めて里の成り立ちから話しますね。今からおよそ三百五十年前の話です。この世界に突如七頭の龍が現れました。彼ら……あ、性別があるかどうかはわかりませんが説明の便宜上彼らって呼びますね。いちいち七頭の〜とか言ってらんないんで。で、彼らはまるで増えすぎた人類を駆逐するかのように当時それなりに栄えていた諸国を蹂躙し始めました。最大の人口を持つティッチ帝国、当時最強と言われた軍隊を保有するユイサワ王国、神々を信仰しその教えを広く伝えたコトガリ教、他にも四つの国をわずか三日で滅ぼしました。列強国が立て続けに滅びたことに危機感を抱いた数カ国が龍を止めるために団結し始めました。当時人々は龍を伝承にある「大罪の悪魔」と信じていたのでそれに対抗する数国の同盟を「栄光の七天使」と呼びました。


 ふぅ……やっぱり慣れない事をすると疲れますね。ちょっと肩もんでくれませ

ん? ついでに胸をもんでそのまま押し倒しちゃってもいいんですよ? いや怒んないでくださいよ、疲れてるのは本当なんで。ま、続けますよ? 質問は最後にまとめて聞くんで


 えーとどこまで話しましたっけ? ああ「栄光の七天使」のあたりでしたっけ。当時の人間は恐ろしいですね。自分たちは神に選ばれた光の戦士だーとか言っちゃってるんですよ? 頭がおかしいとしか言えませんね。えーと、それで彼ら「栄光の七天使」というくらいなんで七つの国が同盟を組んだんですよ。その内の一つが後々龍の谷と呼ばれる国家だったんです。え? それじゃ今と立場が違うじゃないかって? いやいや同じですよ、最後まで聞いてください。でどう同じかと言うと龍の谷は龍と和解するという対抗の仕方だったんですよ。対抗という言葉を使った私が悪いかもしれませんが、龍による被害をくい止めるという方向性に関しては同じなんでそこはまぁご愛敬ということで。ただ彼らに言葉が通じるとは限らないし、暴れ回ってる状態で和解も何もあったもんじゃないんで仕方なく他数国と協力していた風でしたね。で、この辺はすっ飛ばしますけど当時は今よりも神々の奇跡が満ちていた時代で簡単に英雄やら能力付きの武器とか生まれたんですよ。その中でもとりわけ強かった英雄がいて、おもしろい事にこの強い英雄というのが七人いたんで、彼らは神の御使いだと人々にもてはやされ本当に天使の名で呼ばれ始めました。で、天使と悪魔の頂上決戦の末、龍の二頭を無力化し英雄が四人死にました。それでまぁなんやかんやあって龍の谷ができたというわけです。


 ……え? そこをはしょったらわからない? またまたご冗談を〜でも結弦様は親切にも私に語る場を作ってくれたのでもう少し詳しくはしょったところの説明を致しましょう。


 まあそうは言っても本当に簡単な出来事しかなかったんですけどね。さっきも言った通り人間の英雄は四人も死にました。そこで一頭の龍が和解に応じてくれました。それが龍の里が守護する最強の龍こと「ルシファー」です。けど里の人は本人……人じゃないですけど、本人が人間が勝手につけた悪魔の名で呼ばれるのを嫌がるので「光の龍」って呼びますねへ、理由? そんなの知るわけないじゃないですか。えーとでその光の龍は和解に応じましたが他の龍は和解を望みませんでした。その結果人間側は英雄がさらに一人死に、無力化していた内の一頭を捕獲する事に成功しました。この龍を捕獲した国が後のドラゴニア帝国というわけです。で、帝国はその龍を母胎として半龍人とでも言うべき人間を数多く生み出しました。半龍人は龍に対する切り札となり二体の龍を滅する事に成功しました。しかし半龍人の犠牲もすさまじい数に上りこれ以上の駆逐は難しいと栄光の七天使達は考えました。


 このとき龍の里は龍の一頭との和解に成功していたので一線から退きました。というのも光の龍がこれ以上同胞を殺さないと言うのを条件に和解に応じたからです。あ、ちなみに二頭の龍を無力化したのは里の代表。つまり姫のご先祖様です。それでも一人で龍を殺しきることはできませんでしたし、しませんでした。とにかくそのご先祖様の力を恐れた光の龍が里を無力化しなければならないと思い和解したわけです。ですが他の龍は依然暴れていて帝国の虎の子半龍人も数を多く減らしました。なので帝国は里と光の龍に助力を求めました。ですが先ほども言ったように光の龍は同胞を殺されるのを良しとしませんでしたし里も光の龍とふれあう内に龍は滅ぼすべきではないとします。ここで両者の意見が対立しぶっちゃけ今も緒を引いていると言うわけです。


 とりあえず里の成り立ちと帝国の対立関係はわかっていただけたと思うんですが、どうします? 昔話を続けます? それとも現状に移ります?

 ……ほほう。昔話に興味がおありと。なら続けましょうか。


 かくして二者は完全に立場を対立させました。栄光の七天使の内最も強力な英雄を保有する里と、最も戦力が多い帝国が分裂したので同盟は破棄されました。それからの二百年はどの国が龍を滅ぼすかという歴史になります。この時点で残っている龍は五頭、内一頭は里の守護下にあるので手は出せず、一頭は帝国が所有しているので、実質三頭の首の争奪戦となりました。もちろん龍の方も死にたくはないので抵抗しまして数国、国が消えました。といってもその時には人間は龍への対抗策というのを国ごとに用意していたので最初よりもその進行速度は遅かったのです。二百年で消える国がたった一桁です。その異常さがわかると思います。とにかく人間も龍も生きることに必死でした。時代が進むごとに人間が龍を撃退する事例が増えていきます。そしてまた一頭が倒され残った二頭もまるで負けを認めたかのように姿を消しました。こうして龍を所有する帝国は強大な力を得てその版図を広げ、いずれの脅威になりかねない逃げた龍の駆逐を目指しています。龍の里は光の龍との契約により勢力は広げず、消えた二頭の龍の行方を追うようになりました。情勢を見守っていた他の国も平和が訪れたことにより、それぞれ勢力を増していき現在があります。


 これで龍の里とドラゴニア帝国の確執というものが理解できたのではないでしょうか。龍の保護を目的とする「龍の里」、龍の殲滅を目的とする「ドラゴニア帝国」。二者がわかりあえるはずもありません。ですが帝国も光の龍の力を恐れうかつに手は出せず、里も帝国が捕らえた龍の保護は戦力上難しいとし、二国の間で不可侵条約が結ばれました。これがちょうど百年前ですかね。他の大国も指をくわえていたわけではなく、残りの二頭の龍の力を手に入れ、帝国への抑止力としようとしている節があります。


- - - - - - - - - -


 「昔話はこれくらいですかね〜とりあえずここまでで質問はありますか?」


 アイリはそう言うと一息ついて湯飲みを傾ける。が話している間にも飲んでいたので湯飲みは空になっていた。するとさも当たり前かのように結弦にお茶のお代わりを要求した。


 「……とりあえず里の成り立ちと帝国との確執とやらは理解した、と思う。で疑問なんだが……」


 結弦はそう言いお茶の入った湯飲みをアイリに渡す。アイリが受け取った茶を息を吹きかけて冷まし、そのお茶を口に含んだタイミングで結弦は言った。


 「お前何者だ」


 結弦の言葉にアイリの顔から表情が消えた。だがそれも一瞬のことでアイリはぽかんとした表情を浮かべていた。


 「何者って姫の侍女のアイリですよ。いきなりどうしたんです?」


 「……いや、やけに詳しいなと思って。まるで当時者みたいに」


 「当事者ってそれじゃ私どんだけおばあちゃんなんですか〜ってか死んでますよねそれ!?」


 「だよなぁ……」


 結弦は何か引っかかるものがあって先ほどの問いをしたはずなのだが、今となっては何が引っかかったの自分でもわからなくなっていた。


 「他に質問はありますか?」


 「ここまでは特にないかな」


 「わかりました……と言いたいところなんですが、そろそろ夕食の支度を始めないといけませんので、続きは夕食後でもいいですか?」


 「あれ?てっきり俺が寝ている間に済んでたのかと思ったんだけど」


 「いやいや。結弦様が帰ってきたのはだいたい半刻前くらいですよ。どうやらすぐに寝付いたみたいなんで時間の感覚が曖昧だったんでしょう」


 「確かにそう言われるとそんなに外も暗くないね」

 襖を開けると沈みきるまであと数分程度といった太陽が見え、代わりに夜を照らそうとする月が昇っていた。


 「というわけで続きはまた後ほど……」

 そう言うと先ほどまでは違っていつもの侍女モードに戻ったアイリは楚々と結弦の部屋を後にした。


 「まだ承諾した訳じゃなかったんだけど……ま、いいか」

 結弦は窓の外に浮かび始めた月を眺めつぶやいた

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