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解読。

館内は一通り見ただろうとは言われたが、正直通路が長い、予想以上に扉が多いという事しか分からなかった。

それを館長に伝えたが、

「細かいことは先刻渡した地図を見れば分かるだろう。」とやはり適当な返事が返ってきただけである。案内すると言ったのは館長なのに、だ。全く無責任な人である。

この疲れを少しでも癒す為、先程のゲストルームに戻ることにした。ソファに座り地図を開く。期待はしていなかったが、手書きの雑なものが目に入る。

「解読するにはかなりの時間がかかるぞ、これは…。」



それから必死に、地図を片手に館内を歩き回った。その成果を今から報告したいと思う。ご静聴願う。


このボロアパートは縦長の2Kで構成されており、部屋と部屋の間にあったであろう壁は全て()ち抜かれているらしい。そして数多く必要の無いもの、キッチンは一箇所を除いて全て撤去されている。

だからこそ、あそこまでの扉尽くしの迷路が存在出来たのである。

そして、ゲストルームを抜けてからきっかり前方5つの扉を抜け、左の扉を2つ抜けた場所にトイレがある。風呂は、前方の扉を5つまでは同じ。そこからトイレとは反対の、右の扉を2つ抜けた先にある。


あの時僕は走るのに夢中になっていたのと、軽いパニック状態に陥っていたのに重ね、恥ずかしながら汗と涙でびちょびちょだった。その為しっかりと確認は出来ていなかったが、あのゲストルームのような広い空間があと5つあるらしい。

トイレと風呂も、入り口付近のものを除いてあと5つずつある。キッチンは取り壊したのに、トイレと風呂は残しているのは何故か。館長にとってこの2つは無駄なものではなくとても必要なものなのであると推測する。この人の無駄の基準は不明である。


つまり。ゲストルームもとい広い空間から先、前方の扉を5つ抜けて左の扉を2つ抜ければトイレ、右の扉を2つ抜ければ風呂があるという事だ。なんともややこしい。

そして残り5つの広い空間には、ひたすら真っ直ぐ進めば自ずと辿り着ける。何故ならば、トイレと風呂以外の左右の扉の先は全てコンクリートの壁で塞がれていたので、まず迷う事は無いからだ。


ご静聴頂いてる皆様。此処までは理解できたであろうか。

少し、頭をリセットする為に休憩をお勧めする。何故ならば、此処から更に理解できないものを紹介するからだ。これを見たとき僕は「なんじゃこりゃあ。」と地図をぐしゃぐしゃに丸めて地面に叩き落とした。



さて。この地図を手前から解読していくと、最深部の縦長空間にひらがなで”きーぺおうと”という文字が書いてあるのだ。意味が分からないだろう。”きーぺおうと”とはなんだ、と。僕が考えるに恐らく、KEEP OUTの事だろう。あの人は全く英語が出来ないのに何故使いたがる。

勿論見に行った。だが鍵も無いのに何故か固く閉ざされていて、中に入る事は出来なかった。


僕は入り口からそこまでの地図の解読をするだけで戦闘不能直前まで追い詰められていた。そこにこれだ。生傷に粗塩を塗りたくられたようなそんな衝撃に襲われた。だが、何とか踏ん張り耐えてみせた。それを如何しても皆様に伝えたかった。傷だらけになりながらもこの手に掴んだという成果を。此処までの御静寂、どうも感謝する。



心身ともに疲れきってボロ雑巾のようになっていた僕は、フラフラとした足取りでゲストルームへ帰還を試みる。

「早く。早く回復薬を手に入れなければ。」

男に出会う前、最寄りのコンビニエンスストアで購入した炭酸ジュース。これは僕の大好物であり、これを飲めばひとたちに力が(みなぎ)ってくるという代物である。

それを手に入れる為、扉を開ける。

「やぁ、美術館内の構造は理解できたか。」

ソファにだらりと座る男の足元には、空のペットボトルが転がっていた。それは、僕の唯一の回復薬もとい炭酸ジュースであった。…悪魔だ。こいつは悪魔だ。ラスボスだ。「土下座しろ」その一言を最後に僕は、膝から崩れ落ち、そのまま意識を失った。




ーこの美術館の構造に慣れるまで4日程かかった。

簡単に考えれば如何ってことはないのだが、何せ扉が多すぎて何が何だか。混乱してしまう。

そしてこの4日、館長に指示されるがまま扉の掃除をした。あの炭酸ジュースの件についての謝罪は一切無かった。


それよりも何か進展はあったのか気になるところだろう。答えは、全くである。あの本には一体どれほど時間を置けばいいと書いてあったのだろうか。それが分かればいつまで待てばいいのか分かるのだが。困ったことに、あの時館長に急かされ慌てて回転式テーブルに置いてから行方が分からないのである。きっと館長が何処かに隠したのだろうとは思うが、この無駄に広い美術館から一冊の本を見つけ出すのは、到底成し遂げられないミッションである。

よって、成す術も無いまま、館長に振り回され無数の扉を磨くだけで日々幕を閉じることとなったのである。以下、この繰り返しである。扉の掃除をし、館長のお巫山戯に付き合い、ドアノブ話を聞く。何の進展も無い日々がぐるぐると続いた。


そして此処に寝泊まりしてから8日目にして、ようやく事態は進展する。

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