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  作者: 芦静一
≠1
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2-3

 「なあ、なんでいるんだ」

 「え、秘密ですよ。秘密」

 「底の浅い秘密だな」


 桐瀬は目を合わすことなく、詩と廊下を歩いている。寮の廊下、目の前には詰所に繋がる扉がある。食堂はその奥だ。

 朝飯を食おうと部屋を出ると、側に詩が立っていた。奇遇ですね、みたいな感じで。


 「遅刻するぞ」

 「かもしれませんね。あと二十分しかないです」

 暢気に言いやがる。

 「私が学校に間に合うかどうか、それは先輩の手にかかっています! どうなる、水塔詩!」

 詩が勝手に盛り上がる。その横でがっかりする桐瀬。

 やっぱり最初から私に作らせるつもりだったか。


 この寮では、食堂に複数人がいて、かつ料理が終わっていないときに、先にいた方がその人数分の料理をするという沈黙のルールがある。早起きは三文の損、ということだ。


 あっと言う間に食堂前。狭い館内では当然だが。ちなみに北側が詰所、南側が寮だ。

 「どうしました、早く行ってください」

 「おまえが先に入ればいいじゃないか」

 「ええ、それはちょっと」

 にこにこと笑う詩。

 可愛い顔して、がとても似合う少女。いや、そこが可愛さの源なのか。

 同じことをされても人によって受ける印象は違うものだ。多分同じことをもう一人の女にされたら、本気で泣かしてしまうかもしれない。


 あきらめて入室。

 「あれ、桐瀬か」

 神はまだ桐瀬を見放してなかった。卒という生贄。

 「げ、詩もいるし」

 「どうも、卒先輩! ありがとうございます」

 卒は寝癖のついた金髪を軽く掻きむしる。

 「いや、俺三十秒前に調理終わったんだけど」

 ええー、と詩が一人でブーイングしだす。

 「作ってあげたいんだけどなー。無理なんだよなー」

 「そんなこと言わずに!」

 「ルールだから。ルールだか・・・」

 「作れ」

 「作ってください!」


 結局、作ってしまう卒春栄。金髪ヘタレ。

 「わー美味しい! 美味しいですよ!」

 詩が食べているのは、卒自身が食べるはずだった分。桐瀬が眼力で奪取したものだ。

 「ほら手伝えよ、桐瀬」

 「はあ? お前が最初にいただろ、ここに」

 「いや、もう終わってた・・・」

 「作れ」

 はいはい、と炒め物に励む卒。

 総合格闘技なんかをかじっているので体つきは悪くない。のに、精神が酷い。


 「つかお前、私の味噌汁飲んだだろ、昨日」

 ピタッ、と目の前で野菜炒めをついばむ詩が停止した。


 「まさかお前が・・・」

 「お、美味しかったですよ?」

 「・・・私が食うはずだったのに」

 睨みつけると、縮む。獲物になった小動物のよう。

 「ユウトが、ユウトが食べていいって・・・。後の人に味噌汁を分けてくれる優しい人なら、味噌汁も美味しく作れるからって!」

 「ほーなるほど、新友か・・・」

 「ちょ、怖い怖い! 怖いですよ先輩!」

 「本物だ! 獲物を見つけた猛禽の眼だ!」

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