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 その後も僕と美砂は、いろんな話をした。

 自分の過去や癖、思想など、ありとあらゆるものを語り、話すことがなくなると、僕たちはセックスをした。寒さに震える小動物のように、僕と美砂は、相手が持ち得る温もりを求めて抱き締めあった。

 美砂はどうかは知らないが、少なくとも僕は、死以外のものを求めたのは、記憶している限り、今日が初めてだった。

 行為が終わった後、同じ布団の中で横になる美砂に、その旨を伝えてみると、美砂は『私もだよ』と言って、静かに笑った。

「ねぇ、美砂。実は僕、死なないんだ」

 美砂と僕は多くの共通点があり、それ以外は似通った部分しかなかった。その事実が、少しばかり僕を饒舌にさせたようだ。これまで誰にも打ち明けなかった秘密を、僕は彼女に洩らした。

「死なないってどういうこと?サツキは不死身なの?」

「いや、死ぬ時が来たら死ぬんだろう。でも、その時が来るまで、僕は死なないみたいなんだ」

「ふぅん。死ぬことができないなんて、まるで神様みたいだね」

 暗闇の中、隣で美砂が笑みを浮かべる気配がした。

 神様か。僕が本当に神様だとしたら、それならそれで、僕も人生を謳歌することができるのだろう。でも、実際の僕は、殺害されたがっているちっぽけな人間だ。神様みたいに、世界を作るなんてことは、僕にはできない。

 そう。僕はちっぽけな人間だから、できることなんて限られている。でも……。でも、神様は僕もちゃんと人間として作ってくれたみたいだ。

 だからこそ僕は、今も美砂の傍にいたいと思えている。

 ばか。あほ。狂ってる。精神異常者。サイコパス。色々と罵られてきた僕だけど、僕も歴とした人間だったんだ。

 僕は隣で寝息を立てている美砂から目を離し『そうだったのか』と呟きながら、静かに笑った。

 天井を見上げると、カーテンの隙間から、太陽光が漏れているのが目に入った。僕が寝付く前に、どうやらもう朝陽は昇って来てしまったらしい。

 このままぐずぐずしてはいられない。体は癒しを求めている。

 散歩と性行為による疲れをとる為、僕はゆっくりと目を閉じた。

 今日も一日が始まる。億劫な一日が。新しい一日が……。

 きっと、僕は明日も死ぬことができない。この事実は、僕が死ぬまで変わることはないだろう。でも、退屈な毎日は、美砂との出会いをきっかけに、変化していくかもしれない。

 変化すれば、毎日が楽しくなるだろうな。僕はそう考えながら、目を閉じた。

 ふと、気が付くと、僕の腕に美砂の吐息が定期的にかかっていた。

 その彼女の温もりは、僕にとっては冬に燃える炎のように温かく、心地良く、安らかに眠りの世界へと誘ってくれた。

尊敬する牧野修先生の短編小説『いつか、僕は』のような作品を書きたくて、この作品を作りました。


完成したものを見てみると 死のうとするけど死ねない という設定くらいしか共通点ないですねw


拙い作品を最後まで読んで下さった方、ありがとうございました。


お疲れ様です。

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