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 世界が人の苦しみの扱いに寛大だったら、僕も自殺願望に頭を悩まされることはなかったのに。これは僕が気分を害した時に、口から出てくる口癖のようなもの。そして……。

 なら死ねばいいじゃないか。これは僕の周囲の人間の口癖のようなもの。

 ならば死ね。この手の意味合いの言葉を、僕は何度も人々に投げかけられてきた。だからといって、それで苦しいとか悔しいとか、負の感情を抱いたことはない。ただ、言われたら、はいその通りですねと思うだけだ。周りの意見を否定する気はない。僕自身も、死ねば抱えている問題の全てが解決すると思っているから。

 このことばっかりは、周りと意見が合致する。僕は死ねば、周囲の奴等は喜ぶし、死んで悩む必要もなくなれば、僕も幸せだ。しかし、どういう訳か、僕は死ぬことができない。

 これまで何度も自殺を試みてきた。首吊り、飛び降り、入水、感電などなど……。

 自殺計画を実行した時は、あぁこれでやっと死ねるんだなあと、確信に満ちた、ぼんやりとした頭で考えるのだが、結局いつも、僕は死ぬ前に第三者に発見され、救助されてしまう。

 深夜、近所の公園で、腹に思いきりナイフを刺した時もそうだった。野球の試合ができそうなくらい広い敷地の真っ直中。絶対に見つからないという確信の下、電灯の光が届くことのない、乗り降りして遊ぶ遊具の陰に隠れて、僕はナイフの柄を握りしめ、腹から血を流した。

 死にたかった。どうしてかは解らない。気が付けば僕は死を求めていた。

 その日も僕は、自殺計画を周到に練り、実行した。しかし、自殺はいつものように失敗に終わった。

 僕が隠れていた場所は、公園の中心で、木製の遊具の下だっただけでなく、周囲は滑り台やら、梯子やら、幾種類もの遊具に囲まれていた。それにもかかわらず、僕はランニングをしていた五十代のおじいさんに、倒れている姿を発見され、生き延びてしまった。

「おい、大丈夫か?」

 出血で頭がぼうっとしている中、おじいさんの声が僕に向けられているものだと解った時、僕は一人で行う自殺を諦めた。

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