弱者
傾向/兄弟/不良(?)弟→→→→→元いじめられっこ兄/弟病み気味…?
「やめてっ、やめてよっ」
「お前、ほんと、気持ち悪いよなー」
「今日も先生の前でイイコぶってたし」
「女子しか友達いないよな」
降りかかる悪口に、どう対処したらいいのか分からず、僕はずっと、泣いて、嫌がって。そうすれば、
「ちーくんっ!!」
いつも、助けてくれる。
「弟が来たー」
「また弟だーっ!!」
弟が。
「ぶっころすぞ、お前ら!!」
口が悪くて、喧嘩が強い弟。
「ちーくん、大丈夫?」
「う…ん」
悔しいケド、助けてもらってばっか。
「ありがと、ぅ。」
「ううん、いいの。一緒に帰ろ?」
小三の僕と、小二の悠は、兄弟とは思えない程、似ていなかった。
女の子みたいに、ひ弱で、一人でいる方が好きで、友達が全然いないしいじめられっ子の僕に対して、悠は、力が強くて、みんなから好かれていて…
「今日ね、カレーだってさ。」
ぎゅ、と握った手は、悠の方が大きくて、
何だか、ほっとした。
ーーー8年後
「悠、先に行くよ?」
「ん…ぁあ、10分、待って。」
高校二年生になった。
悠は、一年生。同じ高校の。
「うん。」
正直、変わった。
悠、は。
「あー…ヤベ、寝すぎた」
赤が入り混じった髪に、僕からすれば、痛そうなだけの、おびただしい数のピアス…
悠は、不良になっていた。
「悠、ご飯、いらないの?」
別に、犯罪まがいの事はしないし、学校もちゃんと通ってる。成績もいいし。
外見が不良なのだ。それと、
昔は可愛らしかったから、気にしていなかったのだが…
「ちぃが作ってくれるご飯を残したことがあった?せっかく作ってくれてるのに勿体ないだろ?」
露骨な言葉の愛情表現(?)が、増えた気がする。もう十代後半、流石にこういうのは…
「あ、うん。そう、だね。」
悠は、ブラコン…なのか?
家族思い、とも取れるからなぁ…
「行こ?」
「ん、うん。」
当たり前のように、手、握ってくるし。拒否したら、シケるし…
お風呂だって、中学上がるまで、一緒に入ってたし…
「あ、シャンプー切れてたよな?放課後、買いに行こ?」
「あ、うん。そうだね。」
僕達が通っているのは、寮制の男子校。
近所では、一、二を争う程偏差値が高くて
親が受けろ、って煩かったため、受験。そして、合格。
男子校で寮制って、知ってから受けたくはなかったケド、同じ小、中学校の奴等は受けるのが、いなかったから、受けた。
いじめられないし、思ってた以上に過ごしやすいし、友達もできた。
「おはよーっ、千尋。」
「おはよ、祐」
恐らく、一番仲がいい友達の高島 祐。明るくて、面白くて、クラスのムードメーカー。
「後で物理の課題見せてくんない?」
「うん、いいよ。」
握っている手を隠したくなるケド、後で悠の機嫌が悪くなるので、隠せない。
「チッ…」
「悠っ…」
不機嫌むき出し。
「弟さん、機嫌悪くなるし、先行くわ」
「ごめんねっ、後で」
走って学校に向かう祐を見送った。
「悠っ、何で舌打ちするの!!」
「鬱陶しかったから。」
しれっ、とそんな事を言う。悠にとってはどうでもいいことかもしれない。ケド、僕にとっては、凄く、重大なことだ。
「僕の友達に二度とあんな態度とらないで!!絶対だからね!!」
言った後に気付いた。
「はる、か…?」
悠の不機嫌が、どんどん増している事を。
「無理だから。俺、あいつの事、殴ってやるの、必死でこらえるのに精一杯だし。
今度、俺とちぃの時間、邪魔したら殺す」
目が、本気だった。
握った手に、少しずつ、力が入れられてきて、痛い。
「っ…」
「あ、ごめん。力入っちゃった…早く学校行こ?」
真っ直ぐ、悠の目を見ることが出来なかった。
ーーー
「あ、さっきぶり、千尋。」
「ごめん、悠が…」
いいよ、と首を振る祐を見て、少し、安心した。
席に着いて、鞄から教科書を出して机に入れる。
「物理はー…あ、コレ」
「さんきゅ。」
物理の宿題を祐に渡し、席に座る。
「なぁ、千尋、」
「ん?何?」
サラサラと答えを写す千尋の手元を見つめながら答える
「お前って、弟とさ…デキてんの?」
「はぁ!?」
思わず大きな声を出してしまった。
「だってさ、弟さん、すげぇ、やべぇんだぜ?裏で、色々やってんの。」
「え…?何、悪い事、してるの?」
何もやってない、とは、言えないカモだけど、そこまで悪いとは思えない…
「知らねぇの?お前、顔キレーじゃん?やっぱさ、目、付けられるワケよ。つーか今まで何もなかったのが奇跡。
そんで、そーゆう悪いムシ?っつーの、を潰してんのが、弟さん。」