プロローグ
もしもタイムマシンなんてモンがこの世に存在するならば、俺はどんな危険を伴ったって何のためらいも無くそれに乗り込む事だろう。
そして、18年前にタイムスリップして、大切なあの人をどんな事をしてでも絶対に守り抜くんだ。
あの、憎んでも憎みきれない男の手から……
そして全てを、無かった事にするんだ。
俺という、存在自体も……
*
「魁! いつまで寝てるの~! 早く起きなさい! 遅刻するわよ~!」
母さんの声がする。
いつもと変わらぬ朝。
俺はこの声を、当たり前にずっと聞きながら育ってきた。
明るくていつも元気で前向きな母さん……
おかげで俺は、オヤジなんかいなくたって何の負い目も無く大きくなることが出来た。
女手一つだったけど、他の奴らに引けを取らない程度に、さしたる不自由も無く生活してきたし、何より親子仲良く暮らしている。
だから俺は、マザコンなんかじゃないにしろ、少なからず母さんに楽をさせてやりたいなんて思ったりしている。
笑顔の裏で本当はたくさん泣いているのを知ってるから、母さんを幸せにしてやりたいと真剣に思っている。
その考えがマザコンと言うのなら、俺はそれでも構わない。
だって母さんは、本当に大切な人だから。
そして、そんな母さんを幸せにしてやれるのは、俺しかいないと思っていた。
血のつながった親子である、この俺しかいないんだと。
そう、あの日までは……