ミラクル炊飯器(四百文字お題小説)
沢木先生のお題に基づくお話です。
「ミラクル炊飯器」をおかりしました。
律子はスチャラカなOLである。
「とにかくすごいのよ!」
朝からテンションが高い律子。
平井課長の咳払いに気づかない。
「その炊飯器、目覚まし時計にもなるし、加湿器も付いてるし、ラジオも付いているの」
律子の暴走は止まらない。誰も相手にしていないのにも関わらず。
「もちろん、ライトも付いているから暗がりでも大丈夫」
律子は鼻息が荒くなって来た。
「防水加工もされてるから雨に濡れても平気なの」
新しい宗教を開きそうな勢いだ。
「律子君、いい加減にしたまえ!」
梶部係長が怒鳴った。
「すみません」
律子は苦笑いして席に着き、仕事をするフリをした。
恋人の藤崎君も呆れている。
そしてお昼休み。
律子のプレゼンが再開された。
「とにかく使ってみてよ。絶対に気に入るから」
同期の香にしつこく迫る律子。
「考えとくわ」
香は逃げるように去った。
「お願いよお、みんな買って! でないとノルマが……」
副業でマルチ商法に手を出してしまった律子だった。
もう許してください。