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この世界にはどうやら魔王が最強でほかにも獣人族エルフ族小人族がいるようです  作者: 1010
第7章「ナイの消滅」

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第7章 第1話「一人の場所」

風が、変わった。


強くはない。


ただ——


前と違う。


「……静かだね」


セリアが呟く。


誰に言うでもなく。


ただ、感じたことを——


言葉にした。


森の中。


四人は並んで歩いていた。


あの場所を離れてから——


どのくらい経ったか。


時間の感覚が、少しずれている。


「うん」


リオが短く返す。


「ナイが……いなくなったから?」


「たぶん」


「世界が——軽くなった気がする」


ガオルが腕を組む。


「軽い、か」


低く呟く。


「おかしな表現だが——」


「分かる」


その言葉に、セリアが少し驚く。


「ガオルも感じるの?」


「感じる」


「獣人族は——気配に敏感だ」


「圧が、薄れた」


「ずっと——何かに押されていた気がしていた」


「それが、消えた」


セリアは頷く。


ピコが——


セリアの肩で言う。


「消えた、んじゃない」


全員が止まる。


「え?」


「ナイは——消えていない」


「でも……いなくなったよね?」


「いなくなった」


「でも——消えていない」


ピコの言葉は、いつも正確だ。


曖昧にしない。


「どういう意味?」


セリアが聞く。


ピコは少しだけ間を置く。


「記録に——ある」


「何の?」


「ナイという存在が——最後にどうなるかの」


「前の繰り返しでも——同じことが起きたか?」


「起きなかった」


「なぜ」


「ナイが——これほど表に出たことは——なかったから」


リオが、その言葉を聞いて。


前を向いたまま——


「そっか」


と言った。


セリアがリオを見る。


その横顔。


いつも通りだ。


静かで、淡々としている。


でも——


「リオ」


「なに」


「何か——感じてる?」


少しの間。


「感じてる」


「何を」


リオは答えない。


代わりに——


足を止めた。


周囲を見る。


木々。


空。


地面。


「……ここ」


低く言う。


「何があるの?」


「何もない」


「でも——」


「何かがいた場所だ」


セリアは、その言葉を聞いて——


流れを読む。


目を閉じる。


「……うん」


やがて言う。


「何かが——ここに長くいた」


「長く?」


「すごく——長く」


「どのくらい?」


「分からない」


「でも——」


「時間の感覚がおかしくなるくらい——長い」


ガオルが地面を見る。


「跡がある」


「どんな跡?」


「存在の跡だ」


獣人族の直感。


「ここに——ずっといたものの」


「生き物の跡じゃない」


「でも——確かにある」


四人は、その場所に立つ。


ここが——


ナイが長くいた場所。


「……かわいそうだな」


ガオルが、ぽつりと言う。


全員が振り向く。


「え?」


「ここに——ずっと一人でいたんだろ」


「そう、なるね」


「かわいそうだ」


その言葉は——


単純で。


だから、重かった。


「……うん」


セリアが小さく頷く。


リオは——


何も言わない。


ただ、その場所を見ていた。


(ずっと、ここにいたのか)


体もない。


触れない。


見えない。


でも——


確かにいた。


(何を——見ていた)


「行こうか」


リオが言う。


「うん」


四人は歩き出す。


でも——


リオだけが。


もう一度だけ——


振り返った。


何もない場所。


風が吹く。


葉が揺れる。


それだけ。


「……また」


小さく言う。


誰にも聞こえないくらいの声で。


そして——


前を向いた。


その言葉が——


何を意味するのか。


まだ、誰も知らない。


でも確実に——


物語は続いていた。

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