下位宇宙
どうやら地球は宇宙のお偉い方たちからすれば、下位宇宙という分類に分けられるらしい。
目の前のボルゾイ犬顔の宇宙人の説明ではそうとのこと。
下位宇宙はすぐに枠がパンパンになるから間引く必要があるとのことで、定期的にこの殺し合いトーナメントが開催される。
そんな意味不明な説明をされて理解も納得も出来るわけがない。
ちなみにボルゾイ犬は最上位宇宙らしい。
「んで、なんで俺なわけ?隠されたパワーがあるとか?」
「偶然。偶然選ばれ、偶然勝ち残っているので、今回も選ばれた。ただそれだけ」
いかにも宇宙人ですって声色で話しやがるな。
「勝ち残った記憶はないんだけどな」
「今から記憶を移す」
へんな物体が俺の頭上にいきなり現れた。
そして光が頭に照射される。
瞬時に記憶が脳裏を巡る。
思い出す?いや違う、外部に保管されていた記憶を頭に移しただけって感じだ。
全てわかった。わかっていた。
「8回目か。今回も軽く優勝してやるよ」
「いつも通りに戻ったな」
学校の勉強なんて何の意味があるんだ。
数学なんて使う時が来るのか。学者とかにならない限り使う時ないだろ。
そんなことしないで若い時間を無駄にせず、好きなことやらせてくれよ。
そう、今はテスト前。
周防直樹はいつものように勉強から逃げるために頭の中で理由を探す。
「それでもテストはやってくるんだよな」
帰宅部の直樹は普段から時間だけはあるくせにバイトもしない。勉強もしない。
ただゲームばかりしていた。
好きなことしてなにが悪い。
自由には責任が伴う。
は、知るかよ。
時には命で。
最近直樹の頭の中には知らない奴の声が響くことがあった。
自分だけにしか聞こえていない声。幻聴というやつだ。
最初は焦っていたが、今では慣れたようで頭の中で会話したりしている。
部活をしている奴らももう帰ってきだしている時間。
家でゲームをしている直樹が身構えだす。
「そろそろか」
ピンポーン
ガチャ、ガサゴゾ、ドンドンドンドン
直樹の部屋の謎の音が近づいてくる。
バンッとドアが開く。
「またゲームばっかりして!」
そこにはかわいいポニーテールの女の子がいた。
幼馴染の彩だ。
なに、勝ち組?現実はそうでもない。こいつは見てくれはいいが乳が無い。
「どこみて残念そうにしてんのよ!」
バスケットシューズが直樹の顔面に飛んでくる。
さっと避ける直樹。
こいつに胸くらいの慎ましさがあればな。
「男バス、人数足りないって言ってたよ。助っ人で出てあげたら?」
「嫌だよ。もうやめたし。疲れるし」
「直樹のバスケまた見たいんだけどなー」
「あきらめろ」
「もったいない。ケガしたわけじゃないのに」
「いいんだよ」
元バスケ部とはいえさすがに気まずいぜ。
「で、何の用だ?」
「別にそれを伝えに来ただけ」
「そっか。ご苦労さん」
「なによ。冷たいわね」
彩は怒りながら帰っていった。
あいつ当たり前のように勝手に家に上がって帰っていったな。
バスケを辞めた理由?
理由は単純だ。
つまらないから。
というかつまらなくなったんだ。
今まであんなに熱中していたのにいきなりつまらなく感じてしまい辞めた。
それ以来何をしてもつまらない。
勉強も遊びも。
どうしちまったんだ、俺。
気にしなくていい。
またあの声だ。
何がだよ。
もうすぐわかる。
だから何がだよ。
返事はなかった。
やっぱり俺、おかしくなっちまったのか?
ま、気にしてても仕方ない。
いつものように母親と二人で夕食を食べる。
親父は単身赴任中だ。
会話をしている間も直樹はどこか上の空だった。
母親もそんな直樹を心配している。
「直樹、もうバスケはしないの?」
「またそれかよ。いいんだよ。ごちそっさん」
「直樹!」
母親が声を掛けたが、直樹は自室へ戻っていった。
もういいんだよ。
夜、自室のベッドで横になっている直樹。
来なさい。
「あ?」
と声を出した瞬間には直樹は全く知らない場所にいた。
ここで冒頭のシーンへ戻る。
記憶が戻った俺は全部理解した。
これのせいだ。これのせいで全部つまらなく感じてしまったんだ。
今俺は最高に気分がいい。これから始まる殺し合いに早く参加したくてたまらない。
こんな残虐な部分が俺にはあったのか。
ってこのながれも8回目か?
「初戦の相手は誰だよ?」
「グリード人だ」
「へ?あの半魚人かよ。ちょろ」
「油断するなよ」
ボルゾイ犬はニヤリと笑う。
ちなみにこのボルゾイの名前はユーライザというらしい。
地球風に言ってみたららしいが。
上位以上の宇宙の奴らは下位宇宙の星をいくつか担当することになっており、
地球担当が俺の5倍くらいのデカさのユーライザ。
「しねえよ。徹底的に叩きのめしてやる」
開始一分前になった。




