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追加ダメージ+9999の短剣拾った  作者: 赤戸まと


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60.シスター・チヴェッテ


 ギルドでお姉さんに、依頼の手続きをしてもらってきたよ。

 その時に聞いたんだけど、シスターのチヴェッテちゃんも、実は冒険者登録してるんだって。

 しかも、私より上のアイアンランク! 戦えるし回復もできるなんて、パーティ仲間を探すなら、引っ張りだこなんだろうなあ。


 そんなチヴェッテちゃんと、今回はオルディ砦遺跡で冒険だよ。薬師とシスターのパーティなんてアンバランスだね。

 教会で少し話しただけだから、まだよく知らないんだよね。どんな子かな。このあと、馬車乗り場で待ち合わせして会う予定なんだ。


 南区出口の馬車乗り場は、商業区の近くにあって、人が多いよ。私もチヴェッテちゃんも小柄だから、ちゃんと会えるかちょっと心配。

 ヤーナさんと待ち合わせた時は、背が高いから、すぐ見つけられたけどね。


「おーい! こっちだよ!」

 おっと、チヴェッテちゃんの声が聞こえたよ。通り過ぎたみたい。


 あっ、いたいた。女の子がぴょんぴょん飛び跳ねてるよ。

 約束より早い時間に来たはずなのに、チヴェッテちゃん先に来てた。ヤーナさんもそうだったし、みんな律儀だね。


 教会でつけてたシスターのベールは、今日は被ってないみたい。チヴェッテちゃんの綺麗な銀色のミディアムヘアが輝いてるよ。

「冒険者業のときは外してるんだ。動いてたらズレてきて邪魔なんだよね」

 へー。いつも被ってるわけじゃないんだ。


「神父様にバレたら怒られるんだけどね」

 しーってポーズでウィンクするチヴェッテちゃん。けっこう奔放な性格みたいね。


 二人で馬車に乗るよ。今回も、近くの村までの乗合馬車だ……うーん。


「御者さんをじっと見て、どうしたの?」

 チヴェッテちゃんに不思議がられたよ。ちょっと警戒してしまったんだ。こないだのことがあるからね。

 御者さんは前回と同じ人だったから大丈夫そうだよ。


 今回の乗客も少なめだ。このルートは人気ないっぽいね。

 でもヤーナさんのときみたいに沈黙が続くことはなさそう。チヴェッテちゃんはおしゃべり好きみたい。


「――でさ、オルディ砦に行くって言ったら、ヤーナの奴があれこれウンチクを語りだしてさ」


 んん? 今ちょっと?


「あのう、ヤーナさんとお知り合いで?」

 おそるおそるチヴェッテちゃん……いやチヴェッテさんに聞いてみた。


「ああ。冒険者なら知ってるでしょ、神速の剣姫とか言われてる子。同い年だから、たまに飲みに行ったりするんだ」


 ……! ヤーナさんと同い年!? 私と同じくらいかと思ってた!

 軽いショックを受けながら、馬車の揺れに身を任せたよ。


 村に到着して、乗合馬車を降りた。

 あのあとチヴェッテさん、って呼んだらすごい怒られたよ。チヴェッテちゃんって呼ばれるのが気に入ったみたい。


 私のほうが年下だけど、このパーティのリーダーを任されちゃった。

 チヴェッテちゃんは、戦ったり癒やしたりするのは得意だけど、考えたり探したりは苦手なんだって。だからアイアンランクなのに依頼を出したんだね。


 方針は私が決めていいみたいだから、まずはこないだの管理のおじさんに話を聞きに行こう。

 今回の目的は、最後に一体残ったゴーストを倒すために、隠し通路を探すことだ。遺跡を管理してるおじさんなら、何か知ってるかもしれないと思ったんだ。


「なるほど! それは気付かなかったよ。やるじゃないユリシィちゃん!」

 チヴェッテちゃんに褒められたよ。こんなかわいい子に褒められたらニヤけちゃうね。


 管理の人は、前に会った熊みたいなおじさんだ。私もチヴェッテちゃんも以前の依頼で会ってる。小娘二人組でも見くびられることはなかったよ。


「あんたたちには世話になったから協力したいが、隠し通路なんて見たこともないなあ」

 うーん、空振りだったか。

 見回りしてるおじさんが気付かないなら、一筋縄ではいかなそうだね。


 遺跡内の行けるところには、もうゴーストは出ない。おじさん的には、それで管理業を再開できて満足してるようだ。でもチヴェッテちゃんは奥に一体取り逃がしたことを悔やんでて、絶対倒したいみたいだね。


 とりあえず現地に行ってみよう!


 村から10分ほど歩くと、荘厳な石造りの遺跡が見えてくる。

 なるほど、観光地としてはおあつらえ向きだ。


 来たのはニ回目だけど、ニ回目だからこそ深く観察できるのかな。

 朽ちかけた石壁は巨大で、繊細に掘られた紋様が彩っている。そこに絡みつく、青々とした蔦。柱には大木の根が侵食してきて、一体化してる。

 時間があったら、じっくり見物したいねえ。


 なんて観光客気分でいたらだめだよね。ここは戦場で、依頼中なんだ。ほら、魔物の気配が近づいてきた。


「ハングリードッグだね。まかせて!」

 おっとそうだ、チヴェッテちゃんの戦い方を知っておかないとね。

 相手はたまに紛れ込んでくる、ハングリードッグだ。実力を測るにはちょうどいい。


 ひょいひょいと、ハングリードッグに近寄っていくチヴェッテちゃん……あれ? 武器を持ってないよ? 


 牙を剥いたハングリードッグが、チヴェッテちゃんに襲いかかる!


 迎え討つ構えのチヴェッテちゃんは、腰を落として――。


「セイヤッ!」


 正拳突きだ!

 殴りシスターだった!


 ハングリードッグを一撃で倒したよ。拳の速さも、前に見たサブマスに匹敵する鋭さだ。さすがアイアンランクだね。強い!

 よーし、私もチヴェッテちゃんにいいところ見せなきゃ!


 あれ? チヴェッテちゃん、何事もなく先へ進もうとしてるけど、素材はいいの?


「うーん、そいつの素材はよくて200ペネだからね。剥ぎ取る時間と比較したら、この後の探索にかかる時間を優先したほうがいいと思うよ」

 ああ、なるほどそうかも。さすが先輩冒険者、勉強になるなあ。

 やっぱりリーダーは、チヴェッテちゃんにまかせたほうがいいんじゃないかな?


 広場を抜けて、中心部の建物に入る。

 森で区画エリアをまたぐときみたいに、空気が変わったね。まだ魔物の気配は無いけど、身が引き締まるよ。


「建物内には、やっぱりゴーストはいないようだよ」

 さすがシスター。アンデットに対する索敵範囲が広い! この建物全体を探知できるんだ。


 今回は上の階は見なくていいよね。管理のおじさんが定期的に巡回してるから、警戒しなくていいだろう。地下の隠し通路を探すのに専念しよう。


 それじゃあ地下に降りようか。


 そうだ、アレを使おう。前のときヤーナさんを見て羨ましかったけれど、今は私も持ってるもんね。腰につけるランタン!

 ふふ。チヴェッテちゃんに自慢しちゃおうっと。


 いそいそとカバンを漁って取り出そうとしたら、あれ? 急に目の前が明るくなったよ?

 見たら、光魔法を使ったチヴェッテちゃんだった。


「明かりならまかせてね! なんてったってシスターの得意分野だから!」


 あっ、はい。



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