48.ゴブリンとの戦い
前回は軽く通り過ぎた一層だけど、今回は一人だし、ゆっくりと進もう。
このデンジー廃鉱山ダンジョンは元々は鉱山で、たくさんの人が採掘作業で働いていた。そんな労働者のために、この一層の通路はきちんと整備されているよ。
地面は歩きやすくならされ、壁には一定間隔で明かりが灯されている。おニューのランタンの出番はもう少し先のようだね。
こういった場所は魔物も居心地が悪いみたいで、全然見かけない。冒険者はちらほらいるみたいだけど、早足で二層への道を急いでる。
一層に魔物がいたとしても、はぐれた一匹か二匹ってところだろう。そんなの相手にしても、パーティなら稼ぎにならないんだろうね。だけどソロの私にはちょうどいい。それに、溢れないようにするための討伐だから、一層での討伐も大事だよね。
イメージトレーニングでは二匹までならなんとかなりそうなんだ。三匹は状況が有利なら戦う。四匹なら一目散に逃げる!
というわけで、できるだけ少数のゴブリンがいないかな~。
二層へ続く道を外れて、あまり人のいない方へと進んでいく。
お、一匹の魔物の反応だ。この先の三叉路を左に曲がったところ……。
いた! けれど、ゴブリンじゃない、ロックゴーレムだよ!
うーん、放っておくのもよくないよね。一体だし、ミスリルゴーレムより小型だから倒せるだろう!
てやああ。短剣を構えて飛び出した!
ロックゴーレムが気付いて拳を振り上げたけど、ミスリルゴーレムより遅い。パワーはありそうね。
脚力強化の魔法を使わなくても、よよっと躱せたよ。あいたっ。あいたっ。
ロックゴーレムが空振って壁を殴ったから、岩のカケラがこつこつ飛んできて痛いよ。
我慢して背中に回り込んで、てやっ。すごい短剣でゴーレムを斬り裂く。
ゴーレムを動かしていた核が剥き出しになったので、突き刺して壊したよ。よし逃げろ!
動かなくなったロックゴーレムは、その場でドタンと倒れる。
前回ミスリルゴーレムを倒したときに学んだんだ。ゴーレムを倒した後ぽけっとその場にいたら、倒れた衝撃でしびしびするんだ! すぐに逃げて正解だったよ。
倒れたロックゴーレムから核を抜き出す。壊れてても買取額は500ペネだ。今回の割増の対象外だけどね。
さあ次だ次!
まだダンジョンの一層だけど、けっこう広いね。どこまで続いてるんだろう。
二層への階段とは逆の方向へ進んでいるから、他の冒険者はもう見かけないね。道もちょっと荒れてきたから、この先はほとんど人が来ないところだろう。
少し進むと、魔物の気配。
この道の突き当りに、ちょっとした広場になってるところがある。その広場の奥の方にゴブリンが……三匹。
三匹か……。だけどこっちには気づかれてないし、距離的にも有利だ。
やるか! こんなチャンスを逃す手はない。私はそそくさとカバンを下ろして、巨大コウモリのときと同じように準備をした。
スリングショット用の弾を、連射しやすいように地面に並べて置く。
まだ気づかれてないので、奴らをじっくり観察してみた。
三匹とも、私より少し低いくらいの身長だけど、体つきは筋肉がついてて固そうだ。一匹は槍を、二匹は棍棒を武器にしている。
狙うはあの槍持ちだな。リーチが長いやつを先になんとかしておきたい。ちょうどこちらからは横を向いている。他のニ匹と話しているようだ。
洞窟の奥だからやや暗いけど、集中すれば……。よし、スリングショットの特殊効果が発動してターゲット完了。えいやっ!
飛ばした石の弾は、狙ったゴブリンの側頭部に直撃! ゴスッ、と痛そうな音が響いた。と、同時にゴブリンが倒れる。倒したのかな?
他の二匹が気付いて、こちらに襲いかかってくるよ。でもすでに二発目の準備は終わってる。そいやっ!
今度はちょっと急いだので、狙いがわずかにズレた。でもちょうどゴブリンの膝あたりに直撃したようだ。そのまま膝をついて止まった。
残りの一匹がこちらに近づくより先に、魔法を発動。弾をひとつ掴んで、後方へ跳躍をニ回。距離を取る。
もう一度スリングショットを発射。これはゴブリンの右手に当たって、棍棒を取り落とした。チャンスだ。
距離があるので、余裕を持ってスリングショットを短剣に持ち替えた。ゴブリンが棍棒を拾う前に魔法ダッシュで接近。すごい短剣をうりゃあと振り下ろして、ゴブリンを倒したよ。
だけど次、膝をついたやつが立ち上がってこちらにやってくる!
私は普通のダッシュで前に出る。ゴブリンは……棍棒を横薙ぎに振り回してきた!
やっぱりね。コイツはさっきの私のダッシュを見てたはず。すばしっこい奴だと思って、縦じゃなくて横の攻撃をしてきた。
知性のある奴に攻撃するのは苦手だけど、防御側に回ったら、知能の低いゴブリンの考えることなんてお見通しだよ!
魔法ジャンプでゴブリンの上に跳んで棍棒を躱す。
絶対当たると思って全力で棍棒を振り回したんだろう。空振ってゴブリンがよろめく。そこを背中側に着地した私が振り向きざまにセイヤッ! 一刀両断だ!
最初にスリングショットを当てたヤツは、倒れて動かないけど、念のため短剣を突き刺してトドメを刺しておく。
よし! ゴブリン退治もできたよ!
ゴブリンの討伐証明は右耳だ。ゴブリンからみて右だよ。たまに間違える人がいるみたいだから気をつけなきゃ。
三匹のゴブリンから右耳を剥ぎ取って、カバンにしまおうとしてたら……まただ。
誰かに見られてるような、あの気配。こんなダンジョンの中で!?
馬車に乗ってきたから振り切ったと思ったのに、何でまだ追ってくるの!?
急いでカバンを背負って、広場の奥へと避難する。だめだ、ここで行き止まりだ!
今ならはっきり分かる。気のせいじゃない。この広場に向かって、誰かが歩いてくる!
どうしよう……。周りには他の冒険者も、誰もいないのに!
こっちに歩いてきてるのは一人だけみたいだけど、明らかに友好的じゃない。獲物を追い詰める歩き方だ!
相手ももう気配を隠す様子すら無い。私を逃さないように、圧をかけながら迫ってくるよ!
こうなったら戦うより他ない。
短剣を構えて迎え撃とうかと考えたけど……だめだ。この短剣で攻撃したら、相手は……ゴクリ。それは非常にまずい!
スリングショットなら……いや、弾をまだ拾い集めてない! 散らばったままだ!
これまで魔物相手ならなんとかやってこられたけれど、人間を相手にすることになるなんて!




