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追加ダメージ+9999の短剣拾った  作者: 赤戸まと


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45/61

45.贅沢


「すまないねえ、ユリシィちゃん。せっかく久しぶりにきてくれたのに」


 私は今まで泊まっていた宿を引き払って、この街に来た当初泊まっていた宿へやってきた。キッチン付きで4000ペネというお値打価格。おかみさんもいい人だし気に入っていた宿だ。

 だけど今この宿は、長期契約のお客さんで満員なんだって。そりゃこんないい宿ならそうだよね。


 仕方ないから元の宿に戻ってみたら、なんとその宿も、私が出てた間に部屋が埋まっちゃったんだって!

 ここも狭いけど安さではピカイチだったからねえ。


 これは、冒険者ギルドの宿泊施設に逆戻りかな?

 うーん、でも5万ペネや例の粉を抱えて、あそこに泊まるのはねえ。防犯的にちょっと……。

 やっぱり少なくとも鍵のかかる個室じゃなきゃ。探したらもっといい宿があるかもしれないし、今日は色々回って宿屋を探そう!


 この街は大まかに分けて、北区、西区、東区、南区に分かれるよ。

 これまで泊まってた宿は南区だったから、西区に行ってみよう。北区は場違いだし、東区は治安がちょっとね……。


 商業区の南区と違って、こちらは宿屋は少ないね。

 各種ギルドとか鍛冶屋とか、働く人が多い地域みたい。たまに見かける宿屋は、ギルドに出張に来た人用なのか、割高だよ。しかも混んでるし。


 キッチン付き、防犯がしっかりしてる、手頃な価格って条件で探すけれど、全然見つからない。

 そもそも今日泊まる宿も無いんだ。どこかで妥協しないとね。


 うう……なんだか誰かに見られてるような。

 大金と貴重品を持った小娘がうろうろしてるからね。なんだか不安になってきたよ。


 ついつい安全な方へと道を進むと、北区寄りの地区に来ちゃったみたい。うわあ、高そうなホテル!

 この辺りは北区に近いからお店や宿も豪華だね。薬師兼冒険者の小娘には場違いだけど……懐には、5万ペネ。


 ちょっと、泊まってみようかな。


 どれどれ? ディナーと朝食付き、高級ベッドにお風呂付き! なんて魅力的なの!? 一泊……一万八千ペネ。手持ちじゃ三日も泊まれない。

 だけど、一泊なら……ごくり。


「こんにちはー!」

「いらっしゃいませ」

 入っちゃった! ええい、今日は贅沢だ! せっかくお金もあるんだし、楽しんでやる!


 うわー。ホールからだだっ広くてピカピカの内装!

 床も壁も光ってるみたいにツルツル! 従業員さんもピシッとしてる。こりゃ場違いどころじゃないよ!


「当店では身分のご確認をさせていただいております。失礼ですが、身分を証明するものなどをお持ちでしょうか?」

 げっ、従業員さんも場違い小娘の対応に苦慮してる……。決して笑顔を崩さないまでも、眉毛のあたりがひくひくしてるよ。


 ええと、身分証だと、冒険者のストーンランクタグよりも三級薬師のプレートの方がいいよね。大丈夫かなと思いつつ従業員さんに提示した。


「大変失礼いたしました。お部屋の方へご案内させていただきます」

 従業員さんは大きく頷いて、微妙スマイルが満面の笑みに変わったよ。こっちでよかったみたい。

 前金で料金を支払って、三階の302号室へ通された。やけにおっきな鍵を渡されたよ。防犯は万全だね!


 夕食までおくつろぎ下さい、とのことなので、さっそく室内を探検しよう!


 うわー、私が三人くらい寝転べそうなおっきなベッド! カバンを置いて、えーいとダイブしたよ。ぼよーん。


 ふ、ふかふかだあ! これが一万八千ペネの部屋のベッド! しゅごい。


 おねむ……。


 ぐー。


 ……………………。はっ、部屋がノックされてる!


 あれ? いつの間にか眠っちゃってた? お財布! 五万ペネは……ひいふう、あっ! 三万二千ペネしかない! の、残りは……!?


 ……ん? なんだこのやたら広い部屋。フカフカのベッド。


 そうだ! 高級ホテルに泊まったんだった! お金は料金を払ったんだから減ってて当然だよね。おっと、ノックされてたんだっけ。はやくドアの方へ行こう。


 夕食が運ばれてきたよ。


「本日の夕食は、ボアの香草焼きです」


 ほう! わたしゃその料理にはちょっとうるさいよ?

 それと一緒に、パンとスープにサラダ、食後のスイーツまである! 豪勢だね! いただきまーす。


 もぐもぐ。うん、美味しい! イシイオ草は使ってないみたいだけど、これはミミレちゃんのお父さんの料理と同じくらい美味しいかも?

 さすが高級ホテルだね。いや、高級ホテルの料理と同じくらい美味しいミミレちゃんのお父さんがすごいのか。


 パンも柔らかいし、スープもまろやか。サラダも新鮮でシャキシャキだ。スイーツも堪能したよ。ごちそうさまでした!

 はふう。お腹いっぱいだ。こんなに食べたのっていつ以来だろう?


 この後は……そうだ、お風呂入ろう!


 この街には公衆浴場があるからたまに入ってたけど、普段はお湯で身体を拭くだけなんだ。

 食器を下げに来た従業員さんに使い方を聞くと、準備はすでにできてるからすぐに入れるんだって。食事中に全部やってくれてたみたい。気づかなかったよ。さすが高級ホテルだね!


 …………。


 私ユリシィ。

 今、お風呂に入ってます。

 全身をお湯につけると体中の力が抜けて、ふあああ、ってなっていくよ。


 頭の中がぽわわ、ってなって、すっごく幸せな気分!


 公衆浴場だと周りにたくさん人がいてあんまり落ち着かないけれど、一人で入るお風呂ってこんなにすごいんだね!


 はー、さっぱりした! お風呂上がりに冷えたミルクと、ふわふわの寝間着まで用意してあった。

 その寝間着を着てミルクを飲みながら、これからどうしようかなって考えたよ。


 部屋のソファに座ると、商会長さんちにあったソファとおなじくらいフカフカで、やっぱり沈み込んじゃった。

 ソファに溺れながら、こんな贅沢は今日だけだなー、って思ってゆったり堪能したよ。


 明日からはまた薬師兼冒険者だ。


 またこんな贅沢がしたかったら、どんどん稼ぐしかないよ。

 ここに泊まるのなら、初級ポーションで30本必要だ。解毒ポーションならもっと少なくて済むけれど、シケクド草を採りに行かなきゃね。


 シケクド草は、東沼ダンジョンの9層から11層あたりに生えてるらしい。

 ストーンランクになった今なら分かるけど、ちょっと私じゃ無理だね。今までとは比べ物にならないくらい強敵が出るところだ。


 ――そんな無理して採りに行く必要もないんじゃない?


 そもそも、村を出てこの街に来たのは、村に居場所がなくなって、生きていくためだ。


 今ならルオナ草くらいだったら採りに行けるから、初級ポーションの素材には困らない。


 モラリちゃんの先生をやるから、そっちでも収入はあることだし。


 贅沢なんて考えなければ、今のままで、十分暮らして行ける、のか?


 もう、無理して、向いてない冒険者を続ける必要も、ないのか……な?



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