34.三級
蹴りうさぎの討伐とか、薬師ギルドの呼び出しとか、ミミレちゃんの料理食べたりとか、いろいろ予定が詰まってるけれど、まずは覚えた魔法の検証だよね。
というわけで、いつもの空き地にやって来たよ。
人の来ない広い空き地だから、あれこれ試してみよう。せっかく覚えた魔法だから、使いこなせるようにならないとね。
まずは魔法を発動してみる。
足がフワフワするこの感覚。慣れていかなきゃ。
発動はそれなりに早いけど、攻撃されてから避けるには間に合わないかも。戦いになったらすぐ使うのがいいかな。
ジャンプは前に試したから、今度は走る方だ。
空き地にはぽつぽつと木や岩があるので、目印にしてジグザグに走ってみた……速い!
まず走り出しが早いよ。瞬発力っていうの? それが今までとは段違い。走ろう、って頭で考えたときにはもう動いてる感じ。
これは慣れるのに大変そうだなあ。
何度か走ったり止まったりして、大体わかってきたよ。
魔法を使うと、まず魔力をいくらか消費して、その魔力が続く限り脚力が強化されるよ。
効果が切れるときは突然終わるんじゃなくて、徐々に効果が落ちていくタイプみたい。これは助かるね。
ただ、集中丹ほどじゃないけれど、やっぱり体に負担がかかる。効果が切れたらけっこう疲れるよ。連続で使うのは、できなくはないけど、やめたほうがいいね。
持続時間は、3分くらいかなあ。2分くらいはフルで強化されて、そこから少しずつ効果が弱まっていく感じだよ。
強化されるのは、瞬発力、跳躍力、走力、耐久力。それに蹴る力も強くなってるみたい。
蹴りうさぎとのキック対決だ!
これはちょうど私の弱点を補ってくれる、ナイスな魔法だよ。
***
お昼にミミレちゃんの料理を食べて、休憩してから薬師ギルドにやって来た。
薬師ギルドに来るのは、これで三回目だね。
最初に登録したときが一回目で、ニ回目は、冒険者に登録したことの報告に来たんだ。ギルドは掛け持ちできるけど、報告が必要だからね。
どちらもおで……シニヨンのお姉さんが対応してくれたよ。
薬師ギルドの建物は、白くて屋根も窓も扉もキチッとした四角で統一されている。
キチッとしてるから緊張するんだよ。中に入っても、人はそれなりにいるのに、シーンとしてる。冒険者兼業の小娘は場違いだね。
番号札を取って、呼ばれるのを待つんだよ。冒険者ギルドだとそんなのまどろっこしいって、みんな無視して列を作るんだろうな。
ベンチに座ってしばらく待ってると、順番が回ってきた。担当はまたシニヨンのお姉さんだよ。
「ユリシィ様。お呼び立てに応じていただきありがとうございます」
キチッとしたお姉さんに様付けで呼ばれるのは落ち着かないね。
ついついおでこに視線が行きそうなのをグッとこらえて、大人しく話を聞くよ。
何の用件だろうと思ったら、こないだのデンジー廃鉱山ダンジョンの件だった。
まあ薬師緊急指令も使ったし、冒険者ギルドから話がいくよね。
怒られるのかな、と思ったけど逆に褒められたよ。スムーズに対応して、丸薬の効能も適切だったって。
デンジー廃鉱山ダンジョンでの問題は、解毒ポーションの消費具合から薬師ギルドでも把握していて、対応を検討していたみたい。だから私の行動が、渡りに船だったようだよ。
この件と、いつもの道具屋へのポーションの納品実績も合わせると、なんと、昇級できるんだって。
そうそう、薬師ギルドも冒険者ギルドみたいに等級があるんだよ。
今の私は四級薬師。最初に薬師ギルドに来たときに認定されたよ。だからずっと、薬師はみんな四級から始まるんだって思ってた。
でも後から調べたら、本当は見習いの六級から始まるんだって。
誰かに弟子入してたり薬師学校の卒業生とかは、五級からもあるらしいんだけど、何で私は四級からなの? おかしくない?
だっておばあちゃんの弟子の中で、私がいちばんへたくそだったんだよ!?
とはいえおばあちゃんは、薬師ギルドでも噂になるくらいの名士だったらしい。その弟子だってだけで優遇されたのかなあ。
私にとっては近所にたまたま住んでたおばあちゃん、でしかないんだけど。まあでも、それならラッキーだよね。
てことで、私は三級薬師になりました。いえーい。
両手を上げてシニヨンのお姉さんに向けたら、何してんのこの子、って冷たい目を向けられたよ。
あれ……そう、いう流れじゃ、ない……感じ、ですかね……?
しおしおと上げた手を下ろしたよ……。
お姉さんは何事も無かったかのように、三級の説明を始めた。
この街には一級が一人、二級が二人しかいなから、三級薬師といえばけっこうな立場になるみたい。冒険者で言えばブロンズランクと同等くらい?
ギルドから直接依頼されることもあるし、後進の育成にも尽力してほしいって言われたよ。私自身がまだ駆け出しの気分だったから、これは大変だ。
とはいえまだ三級に成りたてだ。他にも三級薬師はそれなりにいるらしいし、そういう心構えだけしておくように、って話だったよ。
話してる間に、三級薬師のプレートが出来上がったからもらったよ。これが三級薬師である証明になるんだって。冒険者のストーンランクのドッグタグと合わせて持っておこう。
ふふ。なんだかすごくすごい人になったみたいな気がするよ。
ニマニマしてたら、お姉さんと目があった。
呆れられるかなと思ったけど、意外にも笑顔を向けられたよ。かっこいいお姉さんも笑うとかわいいね。
「早速ですが、三級薬師のユリシィ様にはこちらの依頼を受注していただきたいのです」
あっ、そういう笑顔か!




