31.金色
いやあ。今回の戦いは危なかったなあ。あちこち擦り傷だらけだよ。
手持ちのポーションを飲んでおこっと。
結局最後は短剣頼みだよね。でもスリングショットもすごく役に立ったよ。戦い方の幅が広がった気がする。
いそいそと巨大コウモリの羽を採取していくよ。ひとつ400ペネだったかな。3の2の……全部で2400ペネ。激戦の割には、それほどでもなかったね。
倒し方はわかったけれど、三匹相手はキツイよ。討伐の残りは二匹だから、三匹のヤツはスルーしていこう。
散らばった荷物を回収して、曲がり角まで進む。
こそっと向こう側を覗くと、いるいる。ちょうど二匹組だ。
さっきと同じように、荷物を置いて準備。コウモリは未だに苦手だけど、先制攻撃できるのは助かるよね。
スリングショットで、集中して狙いを定めて……えいっ!
当たった! すぐさまスリングショットを手放して短剣を抜く! 飛んでくるもう一匹を、チカチュー倒す要領で、てやっ!
倒した! 後は落としたヤツにとどめを刺して、終了だ。ニ匹相手だと、もう大丈夫そうだね。
これで巨大コウモリ5匹討伐、完了だ! 羽を剥ぎ取っておこう。
そうだ、ついでにルオナ草も採取しなきゃ。この四層では前にも採っていったから、まだ育ちきってないよ。次の五層に行っていみようかな。
一本道だから、次の階段もすぐに見つかった。慎重に探知しながら、階段を降りていく。
五層だ。雰囲気は四層と同じだけど、どうやらここには魔物はいないみたい。一本道を進むとやっぱり左に曲がるL字通路だったよ。
……これって、ダンジョンの外周をぐるぐる周りながら降りてるんじゃないかな? ショートカットできる隠し通路みたいな?
だとしたら、ここを見つけたのはラッキーだよね。
曲がり角を曲がった先に、ルオナ草が生えていたよ。採取していこう!
確か次の六層にも生えてるはず。次回はそこで採取して、そうしてるうちに四層のルオナ草が育つから、順番に採っていけば当分ルオナ草には困らないな!
これはいい場所を見つけたぞ。
ここでの採取が終わったので、念のため次の六層も確認しておくかな。
慎重に、慎重に階段を降りていこう。
ゆっくりと六層に降り立った。景色は五層までと同じだけど……何か違う。
なんとなくヒカリゴケがこれまでより、少しだけ明るいような気がする。
魔物の気配は……曲がり角の向こう側に一体。
警戒を上げていこう。天井、壁、床。どんなトラップも小さな魔物も見逃さないように。
ここで引き返すことも視野に入れつつ、曲がり角の向こうをこそっと覗く。
――な、何だあ、あれ!?
コウモリ、だよね? 天井から一体だけぶら下がってる。だけど……何故か全身が金色なんだよ。
まさか、あれが噂に聞く、変異種ってやつなの? 冒険者が一生のうち、一度会えるかどうかってくらい珍しい、魔物の特殊個体のことを聞いたことがある。
その中で、全身が金色に輝く『金族』って種類の変異種があるんだって。たぶん、あの金色のコウモリもそれだよ。
金族のコウモリ……いや、特殊な個体だからもっと特別な呼び方はないかな。コウモリは、バットともいうよね。さしずめ、金族バットといったところか。
あの金族バット。倒すよね、もちろん。だって高く売れそうなんだもん。
いつもと同じように準備して、スリングショットを構えた。
金族バットは巨大コウモリより少し小さいよ。だから狙いが付けにくい。
特殊効果付きのスリングショットじゃなかったら難しかっただろうけど、これなら集中すれば……よし、狙いが定まった。
いけ! 気合とともに弾を飛ばした!
あっ、金族バットが弾に気付いたよ! 金色の羽を広げて……うわ、打ち返してきた! カキーン!
あぶなっ! 返ってきた石が近くにめり込んだ! そっちに気を取られて反応が遅れたよ。短剣に持ち替える暇もなく、金族バットが怒って飛んできたんだ!
石が当たった羽も無傷ではなく、ちょっとへこんでるみたい。だからフラフラと不安定な飛び方だけど……そのせいでチカチューの動きじゃなくなって読みづらい! 慌てて避けるしかないよ!
全く、やっぱりおばあちゃんの言う通り私は楽観的だよ。初めての敵に、同じように戦いを挑むなんて!
金族だから重いのか、巨大コウモリほど速くないのが助かった。なんとか避けることだけはできそう。ひたすら避けながら、どうにか短剣を抜くことができた。ここから反撃だ。
でも最初にスリングショットの一撃に気付いたように、アイツはカンがいいみたい。この短剣がすごい短剣だってわかるのか、すごく警戒してるよ。
あっ、届かないってのがバレて天井に戻っていくよ。こうなったら倒せない。短剣をスリングショットに持ち替えるけど、さっきみたいに打ち返されたら……。
狙いを……ターゲットからずらして、弾を放った! アイツは当たらないのがわかってるのか、まったく動く素振りがない。馬鹿にして!
弾は標的に当たらずに、すこしズレた天井に当たってめり込んだ! ほら、当たらなくてもさっきの私みたいにびっくりするでしょ。金族バットはそっちに気を取られて……気付いたときにはもう遅い。私はすでに次弾を装填済み……行っけ! 命中!
フラフラと落ちてきたアイツを、持ち替えた短剣で一突き! ようやく倒したよ。
こうなったらもう金のカタマリだね。拾って持っていこう。……すごく重い!
しかたない。スリングショット用の弾を全部置いていこう。どこでも拾えるただの石だからね。
金のカタマリをカバンに入れて背負えば、なんとか歩くくらいはできそう。でも探索はここまでだね。
六層のルオナ草の場所も確認したし、あとはこの先の階段を確認だけして引き返そうか……あれ?
おかしいな、ここで行き止まりだよ?




