24.オルディ砦遺跡
乗合馬車は幸か不幸か、他に乗客はいなかった。
遺跡近くの村まで、馬車の中はヤーナさんと二人きりだ。
「…………」
「…………」
沈黙が馬車を支配する。
さすがはゴールドランクの凄腕剣士だ。仕事前に目を瞑って精神集中しているのだろう。そうに違いない。
「……あう…………おふ…………」
落ち着かずにソワソワしてるように見えるけど、きっと気のせいだ。
お仕事の話題でも振ってみるかな。
「あのう、オルディ砦遺跡ってどんなところなんですか?」
キッ、とこちらを向いたヤーナさん。やれやれ仕方ないなという風に語りだした。
「かつて大昔、まだこの王国が成立する前の話だ。多くの部族がこの地域の支配権を争っていた。そんな時代に築かれた砦だ。オルディ砦は難攻不落と謳われ、とうとう一度も落とされることなく、領地を守りきったといわれている」
おっ、饒舌に語りだしたぞ。
ギルドの資料室で調べた内容と大分被ってるけど、新しい情報も増えたよ。
戦乱の世が終焉を迎え平和な時代が訪れたとき、その地を支配していた一族は、もう必要ないと砦を捨てた。
それから現在の王国が確立するまでに、幾度か争いはあったものの、オルディ砦が使われることはなかった。戦の形が変化していき、時代に合わなくなったからだ。
砦の一部は時代とともに朽ちていったが、大半は今だ健在だ。
石を積み上げた防護壁に囲まれ、内部に建てられた堅牢な要塞は、地上三階、地下ニ階に広がっている。
砦としての機能を終え、現在の王国が成立してからは一時期、観光名所として賑わっていた。だがそれもブームが過ぎると廃れていき、放置され、魔物や盗賊がうろつくようになっていった。
近年この地の領主様が兵士を動員して、棲みついた魔物や盗賊を一斉に駆逐。魔物たちが住み着かないように手入れをして、近くの村に管理を任せたそうだ。
ほー。すごい歴史のある建物なんだね。
ヤーナさんはこういった歴史の話が大好きなのか、やや早口で矢継ぎ早に語ってくれたよ。
「現在はその役目を終えたものの、かつては何度攻められても耐え凌いだ見事な構造の砦なんだ。敵の侵入ルートを計算し、有利な配置へ誘導するように道が作られている。効率よく兵を運用するための防護壁などもよく考えられていて……」
「でも結局捨てられたんですよね?」
「…………………………………………」
あ、また黙り込んじゃった。
***
遺跡近くの村まで着いたよ。
ここからなら、遺跡まで歩いて10分程度で行けそうだ。
さてどうするか。ヤーナさんは試験官なので何もアドバイスしてくれない。自分で考えて行動しなきゃ。
まずは遺跡を管理している人の話を聞きに行こう。この村にいるはずだ。
村は100人程度の規模で、ちらほらと出歩いてる人を見かける。
依頼書を元に、なんとか管理している人を探しあてた。熊みたいに大きなおじさんだ。
「ああ、あんたらが依頼を受けてくれた冒険者か」
見た目頼りない薬師の小娘だから、がっかりした様子が見て取れるよ。
ちなみにヤーナさんは私の後ろにこそっと隠れてる。試験官だから表に出ないようにしてるんだね。
おじさんの話によると、遺跡にまた魔物が棲みつくようになったんだって。それだけだとよくあることで、いつもはおじさんや村の人が退治してるそうだ。おじさん強そうだもんね。
だけど今棲みついている魔物には手こずっているみたい。どんな魔物か聞いてみたんだけど、どうも歯切れが悪い。ごにょごにょと、武器を無くしただの、相性が悪いだのと言い訳をしてる。全く頼りないねえ、相性のせいなんかにして。
ようはその魔物を倒せばいいんでしょ。おじさんからはもう情報を得られそうにないし、さっさと遺跡に行くことにしようっと!




