23.ヤーナ
「もう、いい加減人見知りをなんとかしなさいよ。ゴールドランクなんだから」
お姉さんに怒られてた、この人が試験官か。以前見たときと印象がだいぶ違うな。
「ごめんねユリシィちゃん。実力は確かなんだけど、この子人見知りがひどくって。今回の試験官を務めてくれるゴールドランク冒険者の、ヤーナよ」
お姉さんの紹介で名前はわかったけど、ヤーナさんはお姉さんの後ろに半分くらい隠れてキョロキョロしてる。
よくわからないけど、こちらから挨拶したほうがよさそう。
「薬師でウッドランクのユリシィです。よろしくおねがいします」
ペコリと頭を下げると、ヤーナさんは、あっあっ、と焦ったように何か呟いて、ガバリと90度にお辞儀した。
うーん?
「試験用の資料を取ってくるから、二人は会議室で待ってて」
お姉さんがその場を離れると、ヤーナさんは捨てられた子犬みたいな顔で絶望してた。
人見知りって話だけど……いきなり二人っきりにさせられるのか。お姉さんもスパルタだな。
とりあえず以前使ったギルドの会議室のテーブルに、ヤーナさんと向かい合って座ったんだけど……。
「…………」
「…………」
会話がない……。沈黙が、重い。
ヤーナさんも沈黙が苦手なようで、時折何か私に話しかけようとして、あっあっ、と言ったあと、黙り込む。
「…………」
「…………」
キッ、と、ヤーナさんが腹をくくったのか、少し大きめの声で話し始めた。
こちらもつい緊張してしまう――何だろう?
「…………あっ、その……………………ご趣味は?」
お見合いかな?
「えっと、ポーションづくり、です」
「…………なるほど」
会話が終わった。
ヤーナさんが私と打ち解けようとしてくれてるのがわかるから、私もなんとかしたい。だけどゴールドランクのヤーナさんは、私から見たら、雲の上の存在なんだよね。
私だって実は緊張してるんだよ。
そうこうしてると、ようやく受付のお姉さんが戻ってきた。
ヤーナさんは救いの女神を見る目をお姉さんに向けてるよ。
お姉さんが持ってきた資料を受け取ったヤーナさんは、ひと通り目を通してこちらを向いた。
「それでは試験の内容を説明しよう。今回ユリシィさんにはこの依頼を受けてもらう。依頼には私も同行するが――」
あれっ? 急に雰囲気が変わったよ? 道具屋でみたキリッとした剣士だ! うーんこれは、仕事が関わるときだけしっかりするタイプの人だな。
「――危機が迫った時以外は、基本私は見ているだけだ。全て自身で判断して行動してほしい」
おっとそうだ、試験内容をしっかり聞かなきゃ。
依頼は、この街から南にあるオルディ砦遺跡の調査だって。
オルディ砦遺跡は今は使われていない古い遺跡だ。そこの管理をしている人から困ったことがあるから調査してほしい、って依頼だよ。
困ったことってなんだろう。冒険者ギルドに依頼するくらいだから、魔物が棲みついたとかかな。
ヤーナさんもいるし、ギルドの試験なんだからすごく危険ってことはないだろう。
だけど気になったのは、この依頼を達成すれば合格だ、とは言われてないんだよね。ただ達成するだけでは駄目なのか、それとも他にも依頼があるのか。
そういったことはお姉さんもヤーナさんも教えてくれないみたい。
とにかく、この依頼をしっかりこなすしかないよ。
というわけで、さっそくオルディ砦遺跡に向かおう!
この街からは徒歩で二時間。乗合馬車も出てるよ。一人で行くなら節約して徒歩なんだけど、今回はヤーナさんもいるから馬車だね。
お互い準備をして、馬車乗り場で待ち合わせすることになったよ。
ギルドの資料室でオルディ砦遺跡について調べたり、道具屋で消耗品を補充したりと、依頼の準備をしっかりしておく。
待ち合わせ時間にはまだ早いけど、ヤーナさんを待たせないように早めに乗り場に行こう。あ、あれ? ヤーナさんもう来てる!
ビシッと直立不動で私を待ってるよ、急ごう!
「はあ、はあ。すみません、お待たせしてしまいました……」
「…………い、いや、私も、今来たところだ…………」
デートかな?




