21.ドブさらい
ふああ。いい朝!
最近は実入りが良くなってきたから、宿のグレードをあげたんだ。
といっても、2000ペネの素泊まりだけどね。大部屋じゃなくて個室だよ!
キッチンは無いから、ポーションの調合のときはまたミミレちゃんの厨房を借りることになるよ。
昨日は大変だったなあ。
あの後、冒険者ギルドの会議室に連れて行かれて、いろいろ聞かれたんだんだ。
会議室にはいつものお姉さん、鉱山にいた職員さん、初めて見るギルドのサブマスターのオジサン、栗髪、私の五人がテーブルを囲っての話し合いだ。
鉱山での出来事を、職員さんと栗髪の二人で報告していく。私は横で、こくこくと頷いてただけだよ。
栗髪のヤツめ、ミスリルゴーレムを倒したのが私だって、あっさりバラしやがった。
でも、お姉さんもサブマスもあまり驚いてなかったんだよね。
ゴーレムの核の報酬を全部押し付けられそうになったけど、私一人じゃあ、そもそもあの場所まで行けなかったんだから、気が引けるよ。なんとか話し合いで、一緒に行った四人で山分けすることになった。
その代わり、ダンジョンに残ったゴーレムの残骸は全部私の取り分にされた。
ミスリルのカタマリだから、けっこうな額になりそうだ……と思っていたけど、待てよ?
あれをこの街まで運んでくるには、解体の技術者に加えて、運搬要員をたくさん動員しなきゃならないんじゃない? それに道中の馬車台とか考えたら……ほとんど残らない、どころか足が出るんじゃないの!?
その辺りはギルドで全部手配してくれるらしいけど、もちろんその支払いは天引きだろうね。
うう、核の代金を合わせたら足りるかなあ? あ、そうそう、それだけじゃなくて他にも収入があったんだ。
以前、デスなめくじを倒したときの、粘液の代金。あれ、黒のお姉さんは受け取らずに、私の口座に振り込むよう指定したんだって! いらなかったってことは……そんなに安かったのかなあ?
そのせいで、デスなめくじを倒したのも私だってバレちゃったんだよ。
デスなめくじも、もりもりディアーも希少な魔物だから、後から検証班が現場を見に行ったらしい。
戦った痕跡を調べた結果、どうやったかまでは解らないものの小柄なソロ冒険者が斬撃で倒した、ってことまでは判明したんだってさ。
すぐにあの薬師の子だって見抜かれたみたい。
冒険者が、急激に成長して突如頭角を現してくることって、時々あることなんだって。だけど――。
その後、無茶をして大怪我をすることがほとんどだ、ってサブマスが嘆いてた。
だから、お姉さんはいつも口うるさく注意してくれてたんだね。
私、そんなことも気づかなかったんだなあ……。だめだな。
まあそういうことで、今回のミスリルゴーレム討伐が私だってことも、すんなり受け入れられた、ってことみたい。
それでなんだけど、これだけ大物を倒せるならストーンランクに上がってもいいんじゃないか、って意見も出たんだ。
ストーンランク! 冒険者として一人前といわれるランクだ。だけどウッドランクからストーンランクに上がるときは、なんと試験があるんだよ。試験は1週間後に行われることになったんだ。
あと、デンジー廃鉱山ダンジョンでは当面、引き続き松明の使用を控えることに決まったんだって。付近の道具屋と連携してこれからも冒険者に呼びかけていくって。今後安全性が確認されてから、徐々に解除していく方針らしい。
いろいろあったけど、まとめるとこんなところかな。
ストーンランクになれば一人前の冒険者だ。その頃には東沼ダンジョンも解禁されるだろうし、ルオナ草やシケクド草を取りに行こう!
次の試験までの一週間は、そうだなあ。あっ、魔泥が足りないんだっけ。うーん、ドブさらいするかあ。
***
冒険者ギルドにやってきて、依頼掲示板を眺める。
ドブさらいの依頼は……北区4番筋と、東区2番筋、3番筋、南区6番筋だ。
仕事場である地下水路は、東西南北に分けて、通路ごとに番号を振って管理されてるよ。それぞれに特徴があって、報酬額も違うんだ。
北区は報酬が多めで、泥も少なくてやりやすいけど、魔泥はほとんど採れないんだ。
東区は魔泥が採れるけど、報酬が一番安い。しかも泥も多くて重労働だよ。
南区は小銭が落ちてることが多い。商業区だからね。報酬も、採れる魔泥も中間くらいかな。さて、どこにしようか。
悩んでたら、西区7番筋も依頼が出てるのに気付いた。
そうだ、いつもは西区はスルーしてたんだ。ここはウッドランク以上って指定があるからね。だけど今はウッドランクになったからここの依頼も受けられるよ。
なんでウッドランク以上かっていうと、西区の地下水路には、魔物が出るんだ。
チカチューっていう、体長30センチくらいのネズミ型の魔物だ。まあ、それほど強くない。
西区7番筋の報酬は……3000ペネだ! ドブさらいでは一番高いよ。これにしよう!
「はい。承りました。チカチューは弱いけど油断しないように!」
お姉さんにしっかり釘を差されて受注したよ。
それじゃ、ドブさらいに、いってきまーす。




