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追加ダメージ+9999の短剣拾った  作者: 赤戸まと


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20.おかえり


 ゴブリンたちめ、ミスリルゴーレムの脅威が無くなった途端に現れやがったな。

 ミスリルゴーレムを倒したのは私だけど、薬師の小娘ごとき、楽勝だなんて考えてるんだろうね。


 でも事態は非常にまずいよ。

 薬の副作用でほとんど動けないし、短剣で一体は倒せても、その間に他のゴブリンに襲われてしまう。複数の相手は相性が悪いんだ。


 ゴブリンは全部で六体か。

 さっきぶちまけた山芋粉のぬるぬるまで追いやろうと、短剣を振り回して誘導したけど、引っかからない。これだから知性のある敵は!


 う……万策尽きた感じ?

 もう、じりじりと下がるしかなかった――その時。


「うおおおおお!」


 ゴブリンの背後から現れた何者かが、バッタバッタとゴブリンを切り裂いていくよ!


 五体、六体と全部のゴブリンを倒して現れたのは――栗色の髪の剣士のお兄さんだ!


「ふう、何とか間に合ったか。無事か? 嬢ちゃん」

 栗色のサラサラの髪をかき上げ、ニカッと笑みを浮かべたお兄さんは、本当に頼もしく見えた、けど。


「えっ、どうして戻ってきたの? 病気の人は?」


 ちょっと棘のある言い方になっちゃったけど、栗髪のお兄さんは気を悪くした様子もなく笑った。

「ああ、あの筋肉のヤツが二人分を軽々と担いでいったよ。俺がここに戻ってきたのは六人全員の総意だ。やっぱり嬢ちゃん一人を置いていけねえ。代表で俺が来たけど、緊急指令とやらの罰則があるなら、六人全員で受けるよ」


 うう……泣きそう。こんなに心配してもらえるなんて。

 でもホントに助かった。危機一髪だったよ。罰則なんてあるはずがない。おかげ様で生き延びれたんだもん。

 そうだ、えっと。


「ありがとう。はいこれ、お礼に受け取って」

 さっき回収したばかりのそれを栗髪のお兄さんに渡した。


「おう? なんだこれ、って……うわっわ! なんじゃこりゃ! でっかい宝石? 真っ二つに割れてるけど……?」


 おそるおそる私を見るお兄さんに、指を指して教えてあげた。


「あいつから採れた。あげる」

「ミスリルゴーレムじゃねえかあああ!」


 青味がかった白銀のカタマリを落としそうになって、慌てて抱え直すお兄さん。


「待て待て、あいつを嬢ちゃんが倒したのか? しかし……いや、だとしてもこんなの受け取れねえよ。いったいいくらするんだか……」


 命を助けてもらったんだから安いくらいだよ。それに受け取ってもらったほうが色々と都合がいいんだよねえ。


 このダンジョンが人気だったのは、ミスリルが採れるからだ。

 そのミスリルは、実はこのゴーレムが吐き出すガスから形成されていたんだよ。


 もともと鉱山から出ていたガスもあるだろうけど、ガスの最後の残りの濃い部分がミスリルゴーレムの生まれる条件だから、もう自然には出ないだろう。つまり、ガスを吐き出していたミスリルゴーレムを倒した時点で、もうこの鉱山からミスリルは採れなくなるんだ。――ということは。


「はああ、これを売っぱらっちまったら、ゴーレムを倒した張本人ってことで冒険者たちから恨まれるかもしれんってことか」


 ブロンズランクのお兄さんなら、騒ぎにならずに精算することもできるんじゃない?


「まあ、とりあえず預かっとくが……そっちのゴーレムの残骸はどうする?」


 ミスリルゴーレムも、もちろんミスリルのカタマリだから高く売れるだろうね。だけどもう分解することも運ぶこともできない。置いていくしかないね。

 ということでダンジョンを脱出することにした。


「つーか、嬢ちゃん一体何者なんだ?」

「ただの薬師だよ」


 ダンジョンの鉱山を出たら、もう夜だった。ああ、空気が美味しい!

 ギルド職員さんも最後の冒険者の私たちが無事戻ってきて、ほっとしてたよ。先に出た、救出した冒険者たちも意識はしっかりしてて、乗合馬車で帰っていったって聞いて一安心だ。


 私たちは乗合馬車の最終便が来るのを待って、街に帰ったよ。

 最終便だったので、私と栗髪と、それにダンジョン前にいたギルド職員さんも一緒に帰ってきた。

 ちょうどいいので職員さんに、ダンジョンに入った件は、やむを得ない状況だったとお姉さんに説明してもらおう。

 さすがに今回は怒られないよね。ミスリルゴーレムと戦ったけど、戦利品は栗髪にあげたし……あっ!


 病人たちや二人組の冒険者が戻ってきてるはず。私が四層に降りた件、もう伝わってる、かも……。


「おっ? どうした嬢ちゃん青い顔をして。早くギルドへ行こうぜ」

 そうだね。ギルドへ行って、色々説明しないといけないんだった。


 冒険者ギルドに、到着してしまった。栗髪と職員さんに続いて、できるだけ気配を消しながらギルドに入ったよ。


 お姉さんは、いるよ、ね――。


 二人の背中からこそっと顔を出すと、いきなりギルドの制服が目の前に飛び込んできた。

 一体何が、と確かめる前に、ギュッと温かい香りに抱きしめられた。


「ああ、よかった! 無事なのね、ユリシィちゃん! ぐずっ……もう! もう! 全く! こんなに心配かけて!」


 お姉さんの涙まじりの声が、頭の上から染み込んできた。

 これは……今までで一番、堪えるな。どんなに怒られたときよりも。


 でも、こんな私にも、心配してくれる人がいるんだ。

 胸の痛みの中に、ちょびっとの嬉しさと、今更ミスリルゴーレムの破壊力の怖さが込み上げてきて、お姉さんの抱擁の中で、私も泣いちゃった。



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