2.武器屋にて
やれやれ。あのお姉さん、親切だけど過保護すぎるからまいったもんだ。
なんとか素材の場所は聞き出せたけど、絶対に一人で行ってはいけませんよと念を押された。でも一緒に行ってくれる人がいないんだよなあ。
とにかく強くならなきゃ。ということで、武器を買おう!
この街で武器屋は何軒かある。そこそこ安くて品揃えも多く、評判の良いところといえば……あのドワーフの父娘のやってるところだな。ちゃんと事前チェックしてるんだよ。
冒険者ギルドから二番目に近い商店街のはじっこ、工場が併設されてるような大きな建物が並ぶ鉄臭い一角に、その店はあった。
「邪魔するよ~」
「邪魔するなら帰ってんか!」
おっと。ノリの良いドワーフのお姉さんが看板娘って聞いてたけどホントみたいだね。
「お、新顔だね、ゆっくり見てってね」
ポニーテールで褐色肌のお姉さんは、私を見てニカッと笑った。
よかった。薬師の小娘が来るようなところじゃない! って追い出されるかも? なんて心配してたけど無用だったみたい。
店内は遠くに鍛冶の音が聞こえるくらいで、思ったより静か。お客さんはちらほらといて、じっくり品定めしてる。煩雑なイメージのあるドワーフだけど、商品は整然と陳列されているよ。大事にされてるんだね。
手頃な剣を手にとってみた。……お、重いっ。うーん、これじゃあ振り回して戦えそうにないなあ。
店内を見回してみたけど、私が使えそうなのは、短剣くらいかな。でも武器の良し悪しなんて見ただけじゃあ、わかんないよね。どうしよう……そうだ、他のお客さんの選び方を参考にしてみよう。
ということで、二人組の冒険者風のお兄さんたちに近寄って、聞き耳を立てた。
「おっ、このロングソード特殊効果付きだぞ。追加ダメージ+6だって。結構いいんじゃないか?」
「うーん。数値は大きいけどな。追加ダメージは固定数値だと初心者向けだぞ? 使えてせいぜいウッドランクくらいまでだ。追加ダメージなら固定数値より割合数値のほうが長く使えるんだ」
ふむふむ。特殊効果なんてあるんだ。それに固定数値より割合数値のほうが良い、と。
でも私の場合初心者のペーパーランクだからどっちでもいい。特殊効果のある短剣を探してみよう……なんて考えてたら、店内が少し騒がしくなった。
なんだろ?
ちょっとざわついている方を見たら、キリッとした背の高い剣士のお姉さんが入店したところだった。軽くまとめた長い金髪を揺らしながら、堂々と店内を闊歩している。あのお姉さんは確か……。
「お、おい。あれって神速の剣姫じゃないか?」
「ああ。あのレイピア使いのゴールドランク冒険者か! 新しいレイピアでも探しに来たのか?」
そうだ、聞いたことがある。レイピアっていう細身の剣を片手でシュババッってすごい速さで繰り出す、凄腕の女性剣士。冒険者やってると、そんな噂を耳にする機会も多いんだ。あの人がそうなのか。
よし。ゴールドランクの人がどんな買い物をするのか観察しよう!
「店員さん。おすすめの両手剣はあるだろうか?」
えっ? 両手剣? レイピア使いじゃないの? ドワーフお姉さんは困惑して、まわりのお客さんも固唾をのんで見守ってる。そんな空気を察してか、剣士のお姉さんはあわてて言葉を足した。
「事故もしてないのにDPSがあまり変わらなくって。ツーハンド型もいいかなって」
なるほど。戦い方を変えるってことか。ゴールドランクでも試行錯誤とかしてるんだな。すごい! まあ、言葉の意味は半分以上解らなかったんだけどね。
ドワーフお姉さんも納得したようで、気を取り直して一本の大きな剣を取り出した。
「お客様はゴールドランクですので基礎攻撃力の高いこちらで。さらに特殊効果の追加ダメージ15%もついてお得に!」
「いいわね~」
おっ! あれが割合数値の剣かあ。いいなあ。
剣士のお姉さんは満足して両手剣を買っていった。よし、私も特殊効果の短剣を探すぞ~。
――なんて意気込んでみたものの、そんな短剣を私の手持ちで買えるはずもなく。
一番安くて小さい短剣を、なんとか買えただけでした。




