15.道具屋にて
薬師が作ったポーションなどの品を、どこで買い取りしてもらうかっていうのは、薬師ギルドが決めてるんだ。
この街に来たばかりの一年前、私はまず薬師ギルドに向かった。ギルドにポーションを買取してもらおうと思ったんだ。
薬師ギルドは冒険者ギルドと違って、すごくきちっとした場所だよ。
受付のお姉さんも、待っているお客さんも静かにしてて、すごく緊張したなあ。
担当になったお姉さんは、背が高くてキリッとした、怖そうな人だった。
黒髪を上に流して後ろでシニヨンにまとめ上げてるので、おでこが広いなーって見てたらギロって睨まれたよ。
いかにも仕事ができそうなお姉さんでかっこよかったな。
その人が私のポーションをひととおり鑑定して、次からはこの道具屋に卸してください、って指示されたんだ。
他の薬師さんはギルドに直接買い取りしてもらってる人も多いみたいだけど、それだと手数料が引かれるらしい。だから直接道具屋に持っていけるのはラッキーなんだ。
指示されたこの道具屋の店主さんも鑑定士の資格を持ってるから、そういう道具屋に直接薬師が卸すこともあるんだって。
私が担当になってポーションを卸す道具屋は、冒険者ギルドの近くにあるよ。
だから売ってる商品はロープにナイフ、松明やランタンなど、冒険者用のものが多いんだ。
「こーんにーちはー。来たよ」
道具屋の店主はふっくらした体格で、ちょびヒゲを生やしたおじさんだ。
「おっ、ユリシィさんかい。久しぶりだな。ポーションの買い取りだね?」
さすがはヒゲおじさん、話が早い。わたしはいそいそとできたての初級ポーションを10本、台に並べた。
ヒゲおじさんはポーションを手にとって、ふむふむとじっくり鑑定していく。
そのあいだ私は店内を見て回ろっと。
ランタン欲しいなあ。ちょっと高めだね。松明でいいや。こないだ使ったからね、補充しておこう。
店内にあるポーション類はギルドから仕入れたものだね。棚に隙間があるから、わりと売れてるようだ。
あ、鑑定が終わったみたい。
「ユリシィさん、毎度いい品をありがとうね。10本で6000ペネだ」
やった。ここのところ高収入が続いてるぞ。そろそろ宿のグレードを上げようかな。
「ところで解毒ポーションは無いのかい? 最近売れ行きが良くてね。品切れが続いてるんだ」
ほー。そういえば店内に無かったな。解毒ポーションかあ。
「今なら通常より割増で買い取るよ」
なんですと! チャンスだ、解毒ポーションを作ろう! でも今、東沼ダンジョンが閉鎖されてるから、シケクド草が手に入らないんだよね。
悩んでたら、慌ただしい音が聞こえてきた。
「店主さん、解毒ポーションは売ってるか! あったら早くくれ!」
冒険者が三人、一人を両側から肩で支えながら入ってきた。あっ、真ん中の人がぐったりしてるよ!
どうやら毒にやられたらしい。
でも店内には売り切れ中で解毒ポーションは置いてないんだ。ヒゲおじさんは私の方をちらっと見たけど……うーん。自分用にあるにはあるんだけど、微妙なできのやつだからあんまり出したくないんだよね。
そんなことを言ってる場合じゃないか。一本取り出しておじさんに渡した。直接冒険者に売ってもいいんだろうけど、一応おじさんの店の中だからね。店を通さずに売り買いするのは良くないし、何かあった時の責任もおじさんに丸投げできるからさ。
ヒゲおじさんはさっと鑑定して、2420ペネを私に渡した。えっ、多い! 割増だとしても満額だ!
「今一本仕入れた。4000ペネだけど買うかい?」
「助かる! 薬師の嬢ちゃんもありがとな!」
冒険者さんは、真ん中の人に慌ててポーションを飲ませた。解毒ポーションの価格も定価だ。
でも私の見立てだと、効き目は万全ではないと思うんだけど……。あれ? 真ん中の人、もう大丈夫みたいだ。しっかり立てるようになったよ。
ということは……これは動植物由来の毒ではないな?
「あのう、お聞きしたいんだけど、お兄さんたちはどこでこの毒にやられたの?」
「ああ、北のデンジー鉱山跡のダンジョンだよ。今、この辺りで一番人気のある冒険スポットだな」




