14.ポーション作るよ!
霊水20本、無事に手に入れて、これでポーション製作の準備は万端だ。
ちなみにポーション用の瓶は、霊水を入れているものを使い回すんだよ。
この瓶は薬師ギルドで定めている共通の規格で、街で売られてるポーションや薬品類は、ほとんどこの瓶に入れられているんだ。
私たち薬師が持ち込んだものを、ギルドや道具屋の専門家が鑑定して、種類別に封をするんだ。だから鑑定士のお墨付きってわけ。
種類はフタの色で区別するんだよ。
ということで、ミミレちゃんの定食屋に向かおう!
ちょうどお昼どきが終わって、お客さんが引いてる時間帯だね。店は開いてるけどお客さんは今はいないみたい。
テーブルを拭いてるお母さんと、奥で洗い物をしてるミミレちゃんが迎え入れてくれた。
二人とも薬師のポーション作りに興味津々だ。二人に観られながら、厨房の一角をお借りして調合を始めるよ。
私が持ち歩いてる調合道具はこの四つ。調合ナベ、調合おたま、すり鉢、すりこぎ棒だ。
カバンからいそいそと取り出してたら、ミミレちゃんが手招きして調理場の一角をさし示した。
ん? 食器棚の一部がぽっかり開いてるよ。えっ、もしかして、私用に場所を作ってくれたの?
ミミレちゃんは笑顔でこくこくと頷いた。うわ~、助かる! 実はダンジョンや森へ行くときもずっと持ち歩いてて大変だったんだよね。お店用の食器もたくさんあるのに、ミミレちゃん優しい! 思わず抱きついちゃった。
遠慮なく、ナベとおたまを置かせてもらおう。すり鉢とすりこぎ棒は出先でも使うからね。あとは空いてるところに、小さい缶ケースをいくつか並べた。
そして缶ケースをひとつ取り出す。中身は魔泥だ。
まずはこの魔泥。これはあらかじめ湿気をとりのぞいてパサパサにしてるよ。だって定食屋さんの調理場に泥を持ち込むのもねえ。この魔泥と霊水をかけ合わせて、魔力水を作るんだ。
調合ナベに霊水をドバドバ入れて中火で温めて、乾燥させた魔泥を入れて調合おたまで混ぜる。火力は強すぎると魔力が飛ぶし、弱すぎると魔泥が上手く混ざらないから慎重にね。
この調合ナベと調合おたまは、師匠のおばあちゃんから譲り受けた特別製だよ。魔力との調和性が高いんだ。ふつうの鉄の製品だと魔力がすぐ散っちゃう。
調合お玉でそ~っと混ぜ混ぜ。この時の魔力の混ざり具合が、きらきらきれいで素敵! ミミレちゃんのように魔力が見えない人たちには、ただのお湯にしか見えないから不思議そうにしてるよ。お見せできなくて残念だ!
あとは弱火にして、じっくりコトコト魔力を染み込ませる。
この待ち時間を利用して、ルオナ草をすりつぶすよ。ナイフで細かく刻んですり鉢に入れて。すりこぎ棒でごりごり、ごりごり。うーん、いい香り!
さあ、お待ちかねの投入だ。色良し、温度良し。――このタイミング!
粉末状のルオナ草を、ナベの中に均等に撒いていく。するとじんわりと、魔力水のきらきらが虹色に変化していくんだ。この瞬間がたまらない! うへへえ、うへへえ……。
「……お、お母さん」
「しっ、見ちゃいけません」
ん? ミミレちゃんたちの声が聞こえたけど……。おっと、ヨダレが。拭き拭き。――あれ、さっきまで見てた二人がいないや。お店が忙しくなってきたのかな?
後は冷まして瓶詰めするだけだし、そろそろ片付けを始めようかな。お店の邪魔にならないようにしないとね。
***
じゃーん。初級ポーション10本完成したよ!
ルオナ草は黒のお姉さんのおかげでまだまだ残ってる。霊水も残り10本あるけど、魔泥がもう残り僅かなんだ。またドブさらいをやらなきゃ。
厨房からお店に出ると、ミミレちゃんとお母さんは普通に掃除してた。二人にむかってぺこりとお辞儀をした。
「終わりました。厨房使わせてくれてありがとう!」
「う、うん。また、いつでも使ってね」
なんだか不自然な笑みを浮かべてるミミレちゃん。目を合わせてくれてないような気がするけど、気のせいよね。
まだ店内にお客さんはいないみたい。なのに二人とも店に出てたのは、薬師の作業を見ないように遠慮してくれたのかな。初級ポーションの調合なら見られても平気なんだけどね。
実は故郷を出る時に、師匠のおばあちゃんに餞別としていくつか上級のレシピをもらったんだ。メモにも残さないようにって厳命されてて、頭の中に叩き込んだ。そういうのはミミレちゃんでも作業を見せられない。まあ、まだ作れないし素材もないからそんな心配もする必要はないよ。
でもいつかは作りたいから、自分専用の作業場がほしいなあ。
ようし、頑張って儲けるぞ。まずはこの初級ポーションを道具屋に売りに行こう!




