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追加ダメージ+9999の短剣拾った  作者: 赤戸まと


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13.霊水


 依頼達成のサインをミミレちゃんにもらって、次は冒険者ギルドだ。


 ミミレちゃんの定食屋を出たら、もう夜だった。

 治安はそんなに悪くない街だけど、はやく冒険者ギルドに行こっと。抱きかかえてる布の包みを落とさないように、しっかり持ちかえて、夜道を歩く。


 怒られるだろうなあ。


 仕方ないや。今回は素直に怒られよう。なじみのお姉さんに指名依頼の処理をしてもらったから、達成報告もお姉さんにしなきゃなんだよね。

 ギルドに入ると、まだ冒険者たちもそれなりにいた。夕方の混雑ほどじゃないね。各列にならんでるのもだいたい二人くらい。私はお姉さんの列に並んだ。


 お説教、短くすむといいな。お姉さんも残業は嫌だよね。


「こんばんは、ユリシィちゃん。指名依頼の件かな?」


 いつものにこやかなお姉さんだ。

 ミミレちゃんにサインを貰った依頼書と、サンプル用のイシイオ草を一本添えて提出したよ。


 このサンプルはミミレちゃんにランダムに一本抜き取ってもらったもので、ギルドの確認用だ。間違いやすい品目だから一応チェックするんだって。


「はい、OKです。お疲れ様でした」


 依頼書とサンプルのイシイオ草を確認したお姉さんから、依頼達成の承認をもらったよ。サンプルは返してもらったので、後でミミレちゃんに持っていこう。


 依頼料は5000ペネだ。指名依頼としてはギリギリの額だけど、ミミレちゃんと話し合って決めたんだ。

 経営の苦しいミミレちゃんでも出せる額で、私も一日の稼ぎで冒険者としては最高額だ。

 イシイオ草は一度採取すれば一ヶ月は持つから、これから月一回くらい、ミミレちゃんから指名依頼がもらえるんだ。


 お姉さんとしてはもう少し金額を上げたいようだったけど、他にミミレちゃんにお願いごともあったからね。

 そう。お店の厨房を貸してもらえるようになったんだ。もちろんお店の料理が優先で、空いている時間で、ってことだけど。全然オーケー。これでポーションを調合する場所が確保できたよ!


「それと……買い取り、これ」

 角ムカデのツノを二本。台の上に出す。

 ちら、とお姉さんの顔色をうかがう。お姉さんは――。


「まあ、角ムカデ! あの硬い魔物を倒したの? 薬師のユリシィちゃんが一体どうやって――いえ、冒険者の手口を詮索しては駄目ね。すごいわユリシィちゃん。いつの間にかこんな魔物も倒せるようになって、成長しているのねえ」


 褒めてくれた!

 うんうん。お姉さんも怒ってばかりじゃなくて、成長を喜んでくれるんだね。

 ――じゃあ、これも出そうっと。

 いそいそと包みを解いて、もりもりディアーのツノも台に出した。


 ぶちっ。


 あれ? 何かが千切れる音が聞こえたよ?


 ギルド内に残っていた冒険者たちがみんな、すごすごと入口から出ていくけど……。

 ギルドはすっかり静かになって、お姉さんと二人きりになった。


 ――その日の記憶は、無表情のお姉さんの顔を最後に、途切れていた。


 ***


 気付いたら朝だった。

 いつもの宿泊所のベッドだ。いつの間に寝たんだろう。


 ざっと手持ちを確認する。ひいふう、全部で4100ペネだ。

 依頼料5000ペネからギルドの取り分の一割引いて4500ペネ。角ムカデのツノ2本で400ペネ。宿泊費を引いて、うん、ピッタリだね。


 おや? このカードなんだろ?

 あっ、薄ぼんやりと覚えてるよ。ギルドの口座カードだ。


 確かもりもりディアーのツノの査定が、素材管理部に回されるから時間がかかるんだって。振り込みになるからって口座を作ったんだ。

 いくらくらいになるんだろう。レア素材だからもしかして一万ペネとか……ぐふふ。――まあそんなわけないか。


 そうだ! ミミレちゃんから厨房を借りれるから、ようやくポーションを作れるよ!

 今日はポーション作りをしよう。なんとなくギルドに寄る気分にならないんだ。


 初級ポーションに必要な素材は、ルオナ草、魔泥、それと霊水だ。

 最後に残った霊水は簡単に手に入るよ。教会で購入するんだ。


 故郷の村で作っていた時は川の水を汲んで使っていたので、本当は普通の水でもいいはずなんだ。だけどこの辺りの川や井戸の水を使っても、作れなかったんだ。多分、不純物が多いからだと思う。故郷はド田舎だから水も澄んでいたんだね。

 いろいろ探した結果、教会で販売している霊水なら作れることがわかったんだ。


 ということで教会へやってきた。

 けっこう大きなこの街にしては、こじんまりとした建物。あまり人も来ないみたい。

「こーんにーちはー。神父のおじいちゃん、いる?」


 礼拝堂は誰もおらず、静まり返っている。長椅子が左右に5つずつあって、室内の一番奥に女神様のおっきな像があるよ。

 奥の右手側の扉から、白ひげの小柄な神父のおじいちゃんが出てきた。


「おーおー、誰かと思えば、……誰じゃ?」

「んもう! 薬師のユリシィだよ! 霊水を買いに来たよ。20本ちょうだい!」


 ポーション作らなくなってけっこう経つから、おじいちゃんも私のことを忘れてたみたい。

 霊水は一本60ペネ。本来は何に使うかっていうと、体がしんどいときに飲んで、なんとなく楽になった()()()()。とか、旅の野営中に周囲に撒いて、なんとなく魔物が寄ってこない()()()()。とか。そういうあやふやな効果の水だよ。だから私みたいにまとめ買いする人なんてあんまりいない。


「おお、あのいっぱい買ってくれる娘っ子か。しばらく見なんだの」


 やっと思い出したか。


「漫才師のミルキィちゃん」

「違うわ! 薬師のユリシィちゃんだよ!」


 誰よミルキィちゃんって。


「20本も用意しとらんから、ちょっと座っときんしゃい。すぐこさえてくるでなあ」

 そう言っておじいちゃんは裏庭の井戸の方へ向かった。え、作るの? おじいちゃんが? どうやって作るんだろう。ちょっと覗きに行こうかな。


 教会の裏庭の井戸のそばで、おじいちゃんがふがー、ふがー、と桶に汲んだ水に手をかざしてた。

 なんか光ってたから神聖魔法みたいなやつかなあ。まあ、あんなでも神父様だからね。効果があるなら何でもいいや。



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