1.薬師ユリシィ
「悪いなあ、嬢ちゃん。確かに回復職を募集したけどさ、来て欲しかったのは神官とかシスターとか、戦える人なんだよ。ただの薬師はちょっとなあ……」
そですか。
私はぺこり、と頭を下げてパーティメンバー募集してたその人と別れた。
うーん。やっぱり薬師と仲間になってくれる冒険者なんていないんだなあ。
冒険者ギルドの喧騒から逃れるように、私は肩を落としてその場から立ち去った。
冒険者に登録して今日で丸一年。未だに一番下のペーパーランクのままだ。早い人は、とんとんっと数ヶ月でウッドランク、ストーンランクと上がっていくみたい。私は未だに一番下のペーパーランク。
それまでは、故郷の村で薬師見習いをやっていた。
***
村にはちょっと有名な薬師のおばあちゃんがいて、師事してたんだ。私にも薬師の素質があるんだって。他には何もできないんだけどね。
でも薬師の素質がある人なんて別に珍しくもなくて、おばあちゃんの弟子は他にも四人くらいいた。その中で私は一番へたくそだった。
他の弟子が中級ポーションを習ってる頃、ようやく私は初級ポーションと解毒ポーションが作れるようになったくらい。
この小さな村に、薬師は何人もいらないのだ。
15歳になって成人した私は、村に居場所がなくなった。両親も、農業の素質があった兄たちばかり世話してた。薬師しかできない私のことなんて、成人してまで面倒見るつもりもなかったみたい。まあそれが普通だから仕方ないね。
だったら、街に出て薬師のお仕事を探そう! と、この街までやってきた――のはいいけれど。
この賑やかな街の周りでは、田舎の村みたいにポーションの素材なんてそう簡単には手に入らなかったんだ!
故郷の村では、一歩村から出たらそこは森。ポーション用の素材も苦も無く手に入れられた。けれどこの街の周りは街道と畑、草原が延々と広がっている。小さな森もポツポツとはあるんだけど、珍しくもない雑草やきのこ、樹の実なんかが取れるくらいだ。
村から持ってきた素材たちは、あっという間に手持ちが尽きた。冒険者に依頼して採取してきてもらうけれど、依頼料が高くって、まったく儲けにならない。作ったポーションは、道具屋にそこそこ良い値で卸していたんだけど、段々その数も減ってゆく。そのうちご飯も食べられなくなっていって……。
このままじゃまずい! だったら自分で冒険者になって、素材を採取するんだ! と、冒険者ギルドに向かったんだ。
***
一年、冒険者のペーパーランクをやってきたけれど、一緒に活動してくれる仲間はできなかった。
魔物と戦うことなんて無理だし、だから遠征もできない。
冒険者になっても素材を取りに行けなくて、しかたなく雑用ばかりこなしてる。あれからずっとポーションは作れていない。
雑用は主に、地下水路のドブさらいをしてるよ。ドブさらい中に見つけたものは、持ち主が不明なものに限り、もらっていいことになってるんだ。泥の中に、たまに小銭と、ポーション素材の『魔泥』も手に入ることがあるから都合がいいんだ。
日の稼ぎは1000~2000ペネくらい。冒険者ギルドに併設されている簡易の宿泊施設が、一泊800ペネと格安だからなんとか暮らせていけてる。
でもポーションが作れれば、生活はもっと楽になるはず!
初級ポーションの卸値が1本600ペネ。解毒ポーションは1本2200ペネももらえるんだ!
危険だけれど、そろそろ一人でポーション素材採取に挑戦してみようかな? ドブさらいでけっこう体力もついたはずだしね。
冒険者ギルドの受付で、なじみのお姉さんに聞いてみよう! お姉さんは冒険者登録したときから、親身になって面倒見てくれた人なんだ。受付に行ってみると、ちょうどお姉さんのところが空いてた。
「あのう、このあたりでルオナ草かシケクド草が採取できるところはありますか?」
いつもにこやかなお姉さんが、鬼の形相になった。
「まあ! ユリシィちゃんだめですよ! どちらもペーパーランクのユリシィちゃんが取りに行けないような、危険な場所にあるんですから!」
おこられちゃった。




