scene8 隠しルート攻略開始
魔力中枢に、静かな鼓動のような振動が走る。
神殿全体が、生き物のように息をしていた。
それは破壊の兆しではない。
――再構築の前兆だ。
魔王は、もはや敵意を向けてはいなかった。
そこにあるのは、ただの“機構”。
世界が歪んだ結果、
必然として起動した――調整装置。
魔王は、最強の敵ではない。
世界のバグが生んだ、必然。
そして本当の問題は、
この存在を生み出した条件そのものだった。
神殿、魔力偏向、儀式構造、
大陸規模の魔力循環。
それらすべてを、
一つの“勝利条件”として読み解ける者。
それは――
転生者であり、
ルールを読むことに人生を費やし、
「撃破≠勝利」を叩き込まれてきた女。
ヴィオレッタ・アルマリク。
彼女は今、
乙女ゲームの“隠しルート”そのものに立っている。
恋愛も、好感度も、エンディング分岐もない。
あるのは、
失敗すれば、世界が詰むルート。
ヴィオレッタは、ゆっくりと息を吐いた。
魔導銃を構えるが、
その照準は――誰にも向けない。
世界全体を、戦場として見る目。
ヴィオレッタ(心)
(ラスボス戦、ね……)
かつては、画面越しに眺めていただけのイベント。
だが今は違う。
(じゃあ)
(“ノーコンティニュー”でいこうか)
選択肢は、もう表示されない。
リトライも、ロードも存在しない。
あるのは、
最初で最後の完全攻略だけ。
こうして――
悪役令嬢は完全に、物語の外へ出た。
プレイヤーとしてではなく、
世界を勝たせる存在として。
隠しルート攻略、開始。
次章――
世界システム修復戦、開幕。




