scene9 サバゲー授業
王立エルディナ学園の名物授業――
“魔法サバゲー実技”が行われる広大な訓練場は、
朝露を帯びた草の匂いと魔力の気配が混じり合い、
まるで戦場そのものの空気が流れていた。
赤・青の訓練用魔力バリアが点々と立てられ、
各所に自動射撃ターゲットが設置されている。
「うわ……これ、完全に大会仕様じゃん……!」
蓮はテンションを抑えきれず、
内心でガッツポーズを決めながら列に並ぶ。
◆ 1.基礎訓練 ― 魔力バリア展開
「では、まず魔力バリアの展開を行います」
担当教師エレナが、魔導杖を軽く振って見本を見せた。
半透明の防御結界が、すっと身体を包む。
生徒たちが次々に真似する中、蓮も目を閉じて集中した。
(魔力を薄く……身体の表面に沿わせる……
サバゲーの“被弾判定ライン”をイメージして……よし!)
ぱん、と音を立てるように、
ヴィオレッタの身体に淡い紫の結界が展開した。
「早い……!」
「しかも均一……っ」
周囲の生徒がざわめく。
教師エレナも思わず目を見張った。
「……魔力操作が巧みですね。
ヴィオレッタ様は誰に習われたのです?」
「あ、いえ……独学です」
「独学で、ここまで……?」
エレナの声は純粋な驚きに満ちていた。
◆ 2.射撃訓練 ― 射撃フォームの違和感
次は魔導銃を構えての射撃。
生徒たちは各自の訓練用魔導銃を手に取る。
蓮も手にとり、癖のない構えで銃を持ち上げる。
(決めろ……“いつもの”フォームだ)
脇を締め、目線と銃身を一致させ、
足幅は均等、射線は味方を遮らず――
「……え、え?」
「フォーム綺麗すぎない……?」
「貴族の射撃じゃない、あれ……」
周囲の生徒たちがざわざわと騒ぎ始めた。
蓮はそんな視線には気づかず、
ターゲットに向けて二連射を放つ。
――高速連射。
――反動制御完璧。
――照準ブレなし。
ターゲットが同時に二つ破裂した。
「やっぱり反動軽いなこれ……扱いやすい」
訓練用銃の感想をつぶやく蓮。
その背後で、生徒たちの顔色は青くなっていった。
◆ 3.移動射撃 ― “偏差撃ち”が飛び出す
「では次は、ターゲットが動く訓練です!」
自動ターゲットが左右に揺れながら飛び出す。
生徒たちが照準を合わせようと苦戦している中――
蓮は軽くステップを踏んだ。
横移動しながら、無駄のない銃捌きで――
ズバッ、ズバッ!
弾丸はターゲットの進行方向へ“先読み”して撃ち込まれる。
「偏差撃ち……!?」
「そんなの初見でできるものじゃ……!」
「完全にプロの動き……!」
前列で見ていたスカウト科の少女シエラが、
目をまんまるにして後ずさった。
「……なんでこの人、プロの動きしてるの?
ヴィオレッタ様ってこんなキャラだったっけ……?」
◆ 4.ミニチーム戦 ― 王子の視線
最後は三対三のミニゲーム。
蓮は同組の生徒に軽く声をかける。
「前に出すぎないでください。
この角度から射線通りますので」
「え、あ……は、はい……!」
(味方の動線管理まで……?)
ギャラリーの生徒たちは息を飲んだ。
そして――
蓮は戦場の地形を利用し、最短ルートで敵を制圧した。
スライディングからの反撃。
高さ調整で死角を突く。
魔力バリアの“薄い部分”を狙い撃つ。
その動きはもはや“悪役令嬢”ではない。
「……見事、です」
教師エレナは拍手しながら、震える声で言った。
だが――もっと強く反応していた者が一人。
観戦していた王子レオンだ。
(……婚約者よ。
いつの間に、こんな……)
その眼差しは、警戒と驚愕と――わずかな興味で揺れていた。
◆ 授業後
蓮は汗を拭きながら、満足げに伸びをした。
(いやー、サバゲーはこうじゃなくちゃな!
この世界……やっぱ最高だわ……!)
周囲では生徒たちがひそひそと囁き合う。
「ヴィオレッタ様、やばくない……?」
「絶対強くなってる……なんで……?」
「殿下もずっと見てたし……これ、何か起こるぞ……?」




