scene8 小規模勝利 ― だが本命は先に
前線の戦闘が、静かに終わる。
魔王軍は潰走し、
荒野と廃村をつなぐ要衝は、王国軍の手に落ちていた。
誰かが歓声を上げることはなかった。
それでも――
確かな達成感が、戦場を満たしている。
騎士団の伝令が、息を整えながら報告する。
「前線、完全突破!」
「魔王軍の中継陣地は沈黙。進路は確保されました!」
地図上に示された線が、
ついに“封印神殿”へと繋がる。
だが、次の言葉で空気が引き締まる。
「ただし――」
「これは、あくまで前哨戦です」
「魔力反応の本体は、神殿内部に集中しています」
その場にいる全員が理解した。
ここまでの戦いは、
入口に立つための戦闘にすぎない。
敵の核心は、これから。
騎士団長が短く息を吐く。
「……ようやく、スタート地点か」
視線が、自然とヴィオレッタへ向かう。
彼女は地図から目を離し、
神殿の方角――淡く赤く染まる空を見据えていた。
魔力の流れが、はっきりと集束している。
胸の奥が、わずかにざわつく。
ヴィオレッタ(心)
(やっぱりね)
(ここまでが、チュートリアル)
(ここからが――本番)
魔導銃を軽く点検し、
弾倉の切替機構を確かめる。
学園大会の時とは違う。
勝てば終わりではない。
負ければ、世界が終わる。
彼女は静かに、だが確信をもって思った。
(でも……)
(やることは、同じだ)
(状況を読む。無理をしない。勝ち筋だけを取る)
その背中を見て、
誰もが無意識に理解する。
――この戦いも、
彼女は“勝ち続ける前提”で見ている。
こうして、討伐遠征は次の段階へ進む。
小さな勝利の先に待つのは、
魔王復活を賭けた、真の決戦。
戦場は、
いよいよ――封印神殿の中へ。




