scene7 兵士たちの認識変化
前線が落ち着いたあと、
兵士たちは自分たちの体を、思わず確かめていた。
鎧に走る傷。
欠けた盾。
だが――致命的なものは、ない。
誰も倒れていない。
騎士の一人が、信じられないものを見るように周囲を見渡し、
低く声を漏らした。
「……生きてる」
それは、勝利の宣言よりも重い言葉だった。
別の騎士が、噛みしめるように続ける。
「この指揮……戻れる」
「前に出て、ちゃんと……帰れる」
「無駄死にが、ない……」
これまで彼らが知っていた戦争は、
勝つ代わりに誰かが欠けるものだった。
だが今は違う。
敵を倒した数より、
守られた命の数が、はっきりと実感できる。
視線が、自然と一人に集まっていく。
前線より一歩引いた場所で、
ヴィオレッタは地図と魔導反応を照らし合わせ、
次の配置を淡々と確認していた。
誰かが言った。
「……あの人の下なら」
「最後まで、行ける気がする」
その声に、周囲が静かに頷く。
恐怖は消えていない。
だが、絶望もない。
そこにあるのは――希望だった。
少し離れた場所で、レオンはその光景を見つめている。
剣を握る手に、力がこもる。
(彼女は……)
(戦争に勝つためじゃない)
(戦争を――終わらせるための戦い方をしている)
王子として、
そして同じ前線に立つ指揮官として。
レオンは、確信した。
この戦場で最も信頼されている存在は、
王でも、騎士団長でもない。
――生き残る道を示す者。
ヴィオレッタ・アルマリクだ。




