scene6 共闘戦 ― 王者と最強の融合
戦線が、再び動き出す。
先に出たのは――クロス隊だった。
ドレイヴの号令一つで、隊列が美しく展開する。
正面から圧をかけ、迷いなく前進するその動きは、
まさに“王者”と呼ばれるにふさわしい突破力だった。
だが――
それだけでは、魔王軍は止まらない。
そこで噛み合う。
ヴィオレッタの声が、冷静に戦場を切り取る。
「前線、これ以上出ないで。
圧は維持、でも追撃は禁止」
「ガイル、右の瓦礫帯を抑えて。
そこ、射線が通る」
「シエラ、敵後方の魔力反応。
数だけ、速く」
「ミリア、前線三列目。
バリア、薄く広く」
クロス隊が殴り、
ヴィオレッタ隊が縛る。
突破した地点は、即座に制圧される。
無理に深追いしない。
包囲も、殲滅も、必要最低限。
結果として――
魔王軍は、戦えなくなる。
正面に出れば、クロス隊の圧力。
回り込めば、射線管理された制圧域。
突撃すれば、進めない。
退けば、追われない。
戦場が、安定していく。
「……おかしい」
魔王軍の隊列に、明確な混乱が走る。
「押しているはずなのに……前に出られない!」
やがて、合図の魔力が揺らぎ――
敵が、後退を始めた。
逃走ではない。
撤退だ。
整然とした撤退行動。
それが逆に、魔王軍側がこの戦場を
“諦めた”証だった。
静まり返る前線。
騎士たちは、息を呑み、周囲を見渡す。
倒れている味方が、いない。
致命傷者も、ほぼゼロ。
クロス隊副隊長が、思わず呟いた。
「……この戦争」
一拍、置いて。
「勝てます」
その言葉に、誰も反論しなかった。
ドレイヴは、前線の奥――
全体を見渡す位置に立つヴィオレッタを見る。
(融合、か……)
突破力の王者と、
戦場を支配する最強の管理者。
二つが噛み合った時、
戦争は――“消耗戦”ではなくなる。
ヴィオレッタは、淡々と次の指示を出す。
「追撃はしません。
陣地を固めて、次に備えてください」
その声には、勝利への高揚も、慢心もない。
あるのはただ――
勝ち続けるための、冷静な判断だけだった。




