scene2 初接触 ― 魔王軍の“戦い方”
瓦礫の向こうから、魔力が一気に膨れ上がった。
次の瞬間――
黒煙を伴って、魔王軍が姿を現す。
数だ。
考えるまでもなく、物量だった。
下級魔族と魔獣が、隊列も気にせず正面から突進してくる。
咆哮と同時に、粗雑だが威力だけはある魔法が雨のように降り注いだ。
「来るぞ――っ!」
騎士団が迎撃に入る。
盾が並び、防御陣形が組まれるが、敵は止まらない。撃破される仲間など最初から計算に入っているかのように、前が倒れれば後ろが踏み越えてくる。
魔法の乱射。
精度は低い。だが、数が多すぎた。
「左、押されてる!」
「後衛、バリアが追いつかない!」
防御陣形が、じわじわと歪む。
被弾者が出始め、後方に下がる騎士の姿が見えた。
――このまま正面で受け続ければ、削り切られる。
ヴィオレッタは一瞬で理解した。
敵は、味方損耗を前提にした戦い方をしている。
倒されることを恐れず、ただ押し潰す。
“勝つ”ではなく、“潰す”戦術だ。
「……だめだ」
彼女は一歩前に出ると、前線指揮官へ声を投げた。
「一度、下がってください」
周囲が一瞬、ざわつく。
「今、下がるだと?」
「押されてるが、ここで後退は――」
前線指揮官が判断に迷った、その刹那。
「彼女の判断を優先する」
静かだが、はっきりとした声が響いた。
王子レオンだった。
その一言で、空気が変わる。
命令系統が、迷いなく一本に通った。
騎士団長は短く息を吐き、即断する。
「全体、後退! 指定位置まで下がれ!」
命令が走り、部隊が動き出す。
その背中を、ヴィオレッタは冷静に見据えていた。
(いい)
(これで、やっと“戦える”)




