scene8 戦場は学園の外へ
夜空が、静かに歪んでいた。
星々の間を縫うように、
不穏な魔力の光が細い亀裂となって走る。
それは稲妻でも、オーロラでもない。
世界そのものが軋む前兆だった。
遠く――
視線の先、地平線の向こう。
封印神殿のある方向が、
淡く、しかし確かに赤く染まっている。
まるで、
眠りかけた獣が、寝返りを打ったかのように。
ヴィオレッタは、寮の自室の窓辺に立ち、
その光景を黙って見つめていた。
胸に湧き上がるのは、恐怖ではない。
高揚でもない。
ただ――理解。
(大会は、準備運動だったな)
あの緊張感。
あの本気のぶつかり合い。
あの「負けたら終わり」という集中。
(でも、あれは……安全な戦場だった)
勝っても、
失うのは評価や順位だけ。
だが、これからは違う。
(ここからは――)
(負けたら、終わりだ)
命。
仲間。
王国。
世界。
失うものの重さが、段違いだった。
ヴィオレッタは、ゆっくりと窓から離れ、
机の上に置かれた魔導銃を手に取る。
大会で使っていた時とは、
まったく違う感情が胸にある。
競技用の整備ではない。
勝つためでも、魅せるためでもない。
――生きて帰るため。
彼女は一つ一つ、確かめるように部品を外し、
魔力回路を点検し、弾倉を入れ替える。
無駄な動きはない。
だが、その手つきには、
これまでになかった“重み”が宿っていた。
ヴィオレッタ(心)
(サバゲーは、好きだ)
(だからこそ……)
(本物の戦場でも、負けない)
魔導銃の稼働音が、静かに鳴る。
その音は、
これから始まる現実を告げる合図のようだった。
ナレーション――
学園で最強と呼ばれた少女は、
もう学園の中だけに収まらない。
遊戯の戦場を越え、
訓練の域を越え、
やがて――
世界の最前線へ。
物語は、
本当の意味で動き出す。




