scene6 学園への道中での違和感
朝の支度を終え、蓮――もといヴィオレッタは公爵家の馬車へと乗り込んだ。
座席はふかふかで、揺れもほとんどない。これぞ貴族品質である。
(……貴族パワー、すげぇな。通学に馬車ってどんな世界だよ)
そんな軽いツッコミを心の中で入れつつ、窓から外を眺める。
舗装された石畳の通りは賑わい、人々が活気よく行き交っていた。
だが、次の瞬間。
「……ん?」
蓮の視界に、妙な光景が飛び込んできた。
◆ 路地裏で的当てをする冒険者
屈強そうな冒険者が、
木で組まれた簡易射撃場で“魔導銃の試射”をしている。
バシッ、バシィッと光弾が的を正確に撃ち抜き、
命中のたびに魔法式のマーカーがぽんっと光る。
「……え、普通にそこらの通りで撃ってんの?」
蓮の口がぽかんと開いた。
銃声は軽い。
だが出力は確かに“魔法弾”。
あれは完全に、ゲームのサバゲー用武器だった。
(危なくないのかよ!? いや、魔法式のセーフティがあるからか?
てか……この世界、道端で射撃練習してるのが普通なの?)
馬車が進むと、さらに驚く光景が続く。
◆ 露店に並ぶ「子供向けミニ魔導銃」
露店のテントの下に、色とりどりの“おもちゃ魔導銃”が並んでいる。
小学生くらいの子供たちが楽しそうに試し撃ちをしていた。
「見て見て! 新型のキューブ・ショットだよ!」
「こっちは光が虹色に出るやつだ!」
「お母さん、これ買ってー!」
母親らしき女性が苦笑しながら財布を開く。
「はいはい、練習用のだけよ。出力強いのはまだダメだからね」
ぱしゅん、と控えめな光弾が飛び、子供用の的が小さく光る。
蓮「…………いやいやいやいや」
もはや言葉にならない。
(こ、子供向けおもちゃが魔導銃って……マジでサバゲー文化根付いてるじゃん!?
てことは……大人も子供も、国全体で“魔法サバゲー”が当たり前の世界ってことか?)
ゲームでは“設定説明”として流されていた文化。
だが現実にこうして目にすると、インパクトが段違いだった。
街のどこからか楽しそうな声が聞こえてくる。
「今日の対抗戦、見に行く?」
「うん! 冒険者ギルドがチーム組むらしいよ!」
蓮「……待ってくれよ。一般文化レベルでサバゲー普及してんの?」
胸が高鳴る。
ワクワクが止まらない。
(すげぇ……なんだこの世界。俺が高校で週末にやってた遊びが“国民的スポーツ”じゃん!
こんな世界で最強になれたら……絶対メチャクチャ楽しいよな)
ドレスの裾を握りしめ、蓮は小さく笑う。
「……決まってんじゃん。
この世界、サバゲーでトップ取ってやるよ」
ちょうどその時、馬車の向こうに壮麗な校舎が見えてきた。
――王立エルディナ学園。
魔法とサバゲーを極める者たちが集う場所。
心臓が、どくん、と高鳴る。
(よし……行くぞ。ここから、俺の第二人生が本格スタートだ)




