scene5 決意 ― 「この世界で最強になる」
屋敷の中を一通り見て回った蓮は、
興奮でどうにかなりそうな胸の高鳴りを抑えきれず、
そのまま庭へと向かった。
広大な庭園には色とりどりの花々が咲き、
手入れの行き届いた芝生が朝露をまとって輝いている。
まるで絵画のようだが、今の蓮の興味は花でも景色でもない。
(……魔導銃はまだ手元にないし。まずは“魔力操作”とやら、試してみるか)
周囲を見渡し、ちょうど良さそうな木の枝を拾う。
枝は軽く、ちょうど銃の形を想像できる長さだった。
「よし……構えてみるか」
右手で枝を握り、いつものサバゲーの感覚で構える。
脇を締め、肩に当て、腕を伸ばす——
そこまでは“いつものルーティン”だった。
しかし。
枝の先端が、ふっと淡く光った。
「……え?」
直後、枝の内部に吸い込まれるように、
胸の奥から柔らかな“何か”が動き出した感覚がした。
温かい流れ。
血流とも違う、しかし確かに“体の中心”から出てくる力。
(これ……魔力? 俺、今、魔力流してる?)
枝の先端が、ぽうっと光の粒を散らす。
ぱらり……ぱらり……と、白い光が朝の風に溶けていく。
「……マジかよ。魔力操作、意外といける……!」
蓮は思わず笑みを漏らした。
もちろん、ゲームではヴィオレッタは“無属性”設定。
炎も水も風も使えない、地味枠のはずだった。
だが、今の光は——
(これ……無属性でも十分戦えるじゃん。
いやむしろ、応用効きまくるタイプだろ)
ゲーム時代に散々プレイヤーたちが議論していた。
「無属性は不遇だが、極めれば最強」
(なら俺が極めない理由、無いよな?)
枝を握った手に自然と力が入る。
魔力の流れはぎこちない。
けれど、“できない”ほどではない。
むしろ蓮にとっては慣れれば使える“スキル”のように思えた。
彼はゆっくりと構えを解き、深く息を吸った。
◆ 決意
「……この世界で、俺は最強になる」
小さく、しかし揺るがない声だった。
「サバゲー極めて、力で処刑エンドをぶっ潰す!」
処刑イベントなんて関係ない。
王子の好感度も、逃亡ルートも要らない。
必要なのは――“圧倒的な実力”。
魔導銃。
魔法。
そしてサバゲーの戦術。
(最強になって、全部ひっくり返してやる……!)
その瞬間、枝の先から舞い上がった光が
風に乗ってふわりと彼の髪を照らした。
まるで、この世界そのものが
“彼の決意に応えるように”見えた。




