scene4 ガイルの弟子入り志願
午後の授業へ向かうため、
ヴィオレッタ(蓮)が校舎裏の通路を歩いていたそのとき。
「おおおおおいッ!! ヴィオレッタぁぁぁぁ!!!」
遠くから地響きのような声が響いた。
(え、なに!? なんか大型魔獣でも来た!?)
振り向くと──
陽光を跳ね返すほどの筋肉をこれでもかと盛り上げた少年、
ガイル・ハウンドが全力疾走してくるのが見えた。
その走り方は、ほとんど突撃である。
「お前の! 昨日の動きッ!!
めちゃくちゃ速かった!! どうやってる!?」
迫力がすごすぎて、周囲の生徒たちは慌てて道をあけた。
(やばい、完全に狩猟民族の目だこれ……!
この世界、体育会系は魔獣でも狩ってんのか?)
蓮は両手を軽く上げ、なだめるように答えた。
「え、えっと……サバゲー経験があるだけで……」
ガイルはバッと顔を近づけ、
目をキラキラさせて言い放つ。
「すげぇ!! それ教えてくれ!!
ヴィオレッタ! 俺を弟子にしてくれ!!」
廊下の空気が一瞬止まった。
生徒A「……え」
生徒B「悪役令嬢の……弟子入り……?」
生徒C「そんな時代が来るなんて……」
ざわつくどころか、みんな困惑している。
(いや無理もないだろ……
本来“恐怖の悪役令嬢”として恐れられてたキャラに、
筋肉バカが弟子入り志願ってどんな展開だよ……!)
ヴィオレッタ(蓮)は苦笑しながら手を振った。
「いやいやいや! 弟子とかじゃなくて!
別に教えるくらいなら普通に──」
「マジか!! やった!!」
ガイルは早すぎる反応で喜びのガッツポーズを決めた。
「い、いや、今のまだ返事じゃ──」
「俺は今日からヴィオレッタ流を学ぶ!!
ついていくぜ師匠!!」
「師匠やめて!!」
だが遅かった。
ガイルの声は廊下中に響き渡り、
瞬く間に新たな噂が発生する。
「……ヴィオレッタ様って、弟子取るんだ……」
「やっぱり強者は違う……!」
「そのうち“ヴィオレッタ流戦闘術”とかできそう」
(なんでそうなるの!?俺はただのサバゲーマーだぞ!?)
しかしガイル本人はというと──
目を輝かせて、子犬のように懐いている。
「なぁ師匠! 今日も訓練しようぜ!
俺、もっと速く動けるようになりたいんだ!」
蓮は頭を抱えつつも、
なんだかんだで嫌な気はしなかった。
(……まぁ、教えるの嫌いじゃないし。
仲間が増えるのは悪くない)
気づけばガイルは、蓮の後ろを当然のようについてきていた。
こうして──
“悪役令嬢の弟子入り志願事件”は、
学園の新たな伝説となって広まっていくのだった。




