scene3 評価の拡張 ― 学園から世界へ
王立エルディナ学園の外、
魔導院中央塔・解析室。
天井近くまで積み上がった水晶端末が、淡く脈動していた。
そのすべてに映し出されているのは、同じ映像。
――学園サバゲー部の訓練記録。
可動式遮蔽物の配置、被弾判定の履歴、魔力消費量の推移。
索敵から撤退まで、すべてが数値化され、再生されている。
「……異常だな」
白衣の研究員が、思わずそう漏らした。
「命中率は突出していない」
「殲滅数も平均以下」
だが、別の研究員が指先で別の項目を拡大する。
「損耗率を見てください」
画面に浮かんだ数値は、ありえないほど低かった。
「被弾後の生存率、九割以上」
「魔力過熱事故、ゼロ」
室内が、静まり返る。
「これは……」
「戦場シミュレーションとして、完成度が高すぎる」
魔導院高官が、ゆっくりと腕を組んだ。
「彼女は、勝ち方を教えているんじゃない」
「死なない戦い方を教えている」
その報告は、即座に王城へ回された。
──騎士団本部。
若手騎士の訓練場で、模擬戦の様子が映し出される。
だが、これまでの討伐演習とは明らかに違っていた。
正面衝突は避けられ、
射線が管理され、
無駄な突撃は即座に止められる。
教官の一人が、苦笑混じりに言った。
「……生き残るな、こいつら」
別の騎士が頷く。
「今までの“討伐訓練”じゃない」
「これは……撤退も勝利条件に入ってる」
議論は、自然と名前の話に移った。
「討伐訓練という呼び方が、もう合わないな」
「“生存戦術訓練”はどうだ?」
その場にいた騎士団高官が、短く肯定した。
「いい」
「戦争は、死に方を学ぶ場じゃない」
そして――
再び、王城内の会議室。
魔導院と騎士団、双方の報告を聞いた重臣の一人が、静かに断じた。
「これは部活ではない」
全員の視線が集まる。
「新しい“戦争の教科書”だ」
その言葉に、異論は出なかった。
誰もが理解していた。
学園の一角で始まった“遊び”は、
すでに世界の戦い方そのものを、塗り替え始めている。
そして、その中心にいる人物は――
肩書きを持たず、
指揮官でも英雄でもなく、
ただ勝ち方を知っている少女だった。
ヴィオレッタ・アルマリク。
彼女の名前は、静かに、しかし確実に、
学園の外へと広がっていく。




