エピローグ ― サバゲーで世界を救った令嬢 ― scene1 学園サバゲー部(仮)創設 ― 遊びが制度になる
王立エルディナ学園の北端、
かつて演習用に作られながら、いつしか使われなくなった訓練場の一角が、久しぶりに息を吹き返していた。
石畳は補修され、壁は魔導刻印で補強されている。
かつては固定式だった障害物は、今や魔力で位置を変える可動式遮蔽物へと置き換えられ、立ち並ぶ様子はまるで小さな戦場の縮図だった。
その上空を覆うのは、淡く光る結界。
魔力弾の威力を自動調整し、致命傷を完全に防ぐ
――魔力弾安全制御フィールド。
さらに、参加者の身体には簡易魔導具が装着されている。
被弾と同時に魔力反応を検知し、戦闘不能を宣告する装置。
実戦で使われるものの簡略版とはいえ、精度は折り紙付きだった。
「……本当に、部活動として通したのか」
訓練場を見回しながら、学園教員の一人が呟く。
「通した、というより」
「必要だと認められたんです」
応じたのは魔導院の高官だった。
学園、騎士団、魔導院。
三者協議の末に出された結論は、前例のないものだった。
――戦術判断訓練部として、正式承認。
名称はまだ仮。
生徒たちはすでに親しみを込めて、こう呼んでいる。
「学園サバゲー部」。
そして、その空間の隅。
壁に軽く背を預け、全体を眺めている少女が一人いた。
ヴィオレッタ・アルマリク。
部長でもなければ、顧問でもない。
名簿にも、役職欄にも、彼女の名前はない。
彼女の立場はただ一つ。
――設計者。
そして、たまに様子を見に来る人。
騎士団長が小声で言った。
「本当に、関わらなくていいのか」
ヴィオレッタは肩をすくめる。
「形にしただけです」
「あとは、勝手に回ります」
視線の先では、初めて魔導銃を手にした生徒たちが、緊張した顔で遮蔽物の陰に身を潜めている。
誰かが一歩踏み出し、誰かがそれを真似る。
ぎこちない動き。
だが、確かに“考えながら動こう”としている。
ヴィオレッタは、それを見て小さく息を吐いた。
(……うん)
(形にしただけで、あとは勝手に育つ)
遊びは、もう制度になった。
そして制度になった以上、これは誰のものでもない。
ここから先は――
世界が、自分で学ぶ番だ。




