scene6 ヴィオレッタの回答 ― 優先順位のズレ ヴィオレッタの反応
ヴィオレッタは、ほんの一瞬だけ目を見開いた。
驚き。
否定ではない。
ただ、予想外だった、という程度の。
そのあと、すぐに視線を落とす。
考えるというより、頭の中で優先順位を並べ替えるような仕草だった。
沈黙は短い。
「……嬉しいです」
その一言に、レオンの肩がわずかに緩む。
だが――
「でも」
その続きで、ヴィオレッタは少しだけ視線を逸らした。
頬に、夕焼けとは別の赤みが差す。
「今は、サバゲーの方が大事なので」
世界が止まった。
レオンは瞬きを忘れ、完全に固まる。
数拍遅れて、耳まで真っ赤になる。
「……そこ、即答なんだ」
声が、ほんの少しだけ裏返った。
ヴィオレッタは気まずそうに、けれど嘘はつかず、小さく続ける。
「だって……」
「勝つの、楽しいですし……」
その声は小さかったが、妙に説得力があった。
レオンは、額に手を当てる。
(世界を救った指揮官が、これか……)
だが、胸の奥に湧いた感情は、落胆ではない。
むしろ――
(……らしいな)
戦場で、
勝利条件を見失わず、
最適解を選び続けた彼女。
その彼女が、
自分の気持ちより“楽しい勝負”を優先する。
それは、拒絶ではなかった。
ただの、価値観のズレ。
レオンは苦笑しながら、息を吐く。
「……分かった」
「じゃあ、今は」
「同じフィールドに立てることを、目標にするよ」
ヴィオレッタは、少し驚いてから、ほんのわずかに笑った。
夕暮れの庭園に、
英雄でも王子でもない、
不器用な二人の距離が、静かに定まった。




