scene5 レオンの告白 ― 王子としてではなく
演出
人払いされた静かな場所
王子の正装ではなく、遠征時の簡素な服
レオンの言葉
肩書きではなく、個人としての言葉
「君の判断が、世界を救った」
「並び立てたことを、誇りに思う」
告白
「……君を、好いている」
一瞬の沈黙 小説化
王城庭園。
夕暮れの光が、整えられた芝と白い石畳を柔らかく染めている。
この場所にしては珍しく、人の気配がなかった。
近衛も侍女もいない。
風に揺れる木々の音と、遠くで噴水が水を落とす音だけがある。
レオンは王子の正装ではなかった。
遠征時と同じ、動きやすさを優先した簡素な服装。
王城にいるのに、肩書きを脱いだ姿だった。
ヴィオレッタは、その理由をすぐに理解した。
(……これは、王子の場じゃない)
レオンはしばらく言葉を探すように、庭園を見渡してから口を開いた。
「世界は、君を英雄と呼んでいる」
淡々とした声だった。
「だが、俺は――」
「君を“英雄”として呼びたくて、ここに来たわけじゃない」
ヴィオレッタは黙って聞いている。
レオンは彼女を見る。
命令する視線でも、守る視線でもない。
同じ戦場に立った者の目だった。
「君の判断が、世界を救った」
「誰も死なせず」
「壊れる前に、止めた」
一拍、息を吸う。
「……並び立てたことを、誇りに思う」
それは王子の言葉ではなかった。
勲功を讃える言葉でもない。
一人の指揮官が、
もう一人の指揮官に向けた、率直な敬意だった。
沈黙が落ちる。
夕暮れの光が、少しずつ色を失っていく。
そしてレオンは、視線を逸らさずに続けた。
「肩書きも、立場も抜きで言う」
ほんのわずか、喉が鳴る。
「……君を、好いている」
一瞬、風が止まったように感じられた。
ヴィオレッタは、言葉を失う。
世界を相手にしてきたはずなのに、
この沈黙の方が、よほど対処が難しい。
(……え、これ)
(最終ボスより厄介じゃない?)
そんな場違いな思考が、頭をよぎる。
レオンは答えを急かさない。
王子でも、指揮官でもなく、ただの青年として立っている。
夕暮れの庭園に、
二人分の呼吸だけが、静かに重なっていた。




