scene4 学園の変化 ― 視線と距離
「本物の英雄だ……」
「あの戦術、教本になるって」
ヴィオレッタの違和感
誰も絡んでこない
気軽な会話が減る
ミリア(小声)
「ヴィオレッタ様、遠くなっちゃいました……」
ヴィオレッタ
「……?」
「立ってる場所、昨日と同じだけど」 小説化
王立エルディナ学園。
復学初日の朝。
校門をくぐった瞬間、ヴィオレッタは違和感を覚えた。
――静かすぎる。
以前なら、ざわめきや視線はあっても、好奇や警戒が混じっていた。
だが今、彼女に向けられるのは別のものだ。
廊下を歩けば、生徒たちが自然と道を空ける。
ぶつからないように、ではない。
敬意を払う距離を、無意識に取っている。
ひそひそ声が、耳に届く。
「……あの人が」
「本物の英雄だ……」
別の声。
「あの戦術、もう教本にまとめられてるらしいぞ」
「学園の模擬戦、全部ルール変わるって」
ヴィオレッタは、思わず足を止めた。
(……なんで、そんなに離れるんだ?)
誰も絡んでこない。
誰も軽口を叩かない。
以前のように、噂話を投げつけてくる者もいない。
それは好意だ。
間違いなく、善意と尊敬だ。
だからこそ――居心地が悪い。
後ろを歩いていたミリアが、小さく呟く。
「ヴィオレッタ様……」
「なんだか、遠くなっちゃいました……」
その声には、不安と、ほんの少しの寂しさが滲んでいた。
ヴィオレッタは振り返る。
「……?」
きょとんとした表情で、首を傾げる。
「立ってる場所、昨日と同じだけど」
ミリアは言葉を失う。
ガイルとシエラも、少しだけ苦笑した。
ヴィオレッタは周囲を見回し、ようやく気づく。
(ああ……)
(私が変わったんじゃなくて)
(周りの距離が変わったのか)
英雄になった実感は、まだない。
世界を救ったという手応えも、胸には残っていない。
ただ――
いつもの学園の廊下が、少し広くなった気がした。
その広さが、
彼女にとっては一番、やりづらかった。




