scene3 公式評価 ― “悪役令嬢”の完全上書き
王城・公式記録会議
内容
魔王討伐の功績整理
戦術指揮・損耗最小化・世界修復の立役者として記録
決定事項
称号付与
「王国特別戦技英雄」
学園での立場変更
問題児/悪役令嬢 → 模範的戦術家
王立魔導院からの研究協力要請
教師たちの反応
「……評価を、完全に誤っていた」
「彼女は“勝つこと”を理解している」
ナレーション的整理
悪役令嬢というレッテルは、
公式記録から静かに削除された。 小説化
王城・中央記録棟。
厚い魔導石の壁に囲まれた会議室には、王国の“公式な言葉”を決める者たちが集っていた。
長机の上には、水晶板と羊皮紙。
魔導院、騎士団、王立学園――それぞれの代表が、淡々と報告を積み上げていく。
「魔王事案、最終報告です」
記録官の声が静かに響く。
「封印神殿における魔力偏向、完全解消を確認」
「再出現条件、消滅」
「大陸全域の魔力循環、正常域に安定」
一拍置き、次の資料が示された。
「本件における戦術指揮――
損耗率、歴史的最低水準」
室内に、わずかなざわめきが走る。
「討伐隊全体の損耗を抑えつつ、
魔王存在の“再発条件”そのものを排除」
「単なる撃破ではなく、
世界修復を目的とした戦術判断」
評価文は、もはや異論の余地がなかった。
騎士団長が低く告げる。
「……戦争の形を変えた」
続いて、決定事項が読み上げられる。
「王国として、ヴィオレッタ・アルマリクに称号を授与する」
記録官の声が、正式文言を刻む。
「称号――
『王国特別戦技英雄』」
魔導院高官が頷く。
「併せて、王立魔導院より研究協力を正式要請」
「世界修復戦術、ならびに魔力制御理論の共同研究対象とする」
学園側代表の教師は、苦い表情で口を開いた。
「……我々は、評価を完全に誤っていました」
別の教師も、静かに続ける。
「問題児でも、悪役令嬢でもない」
「彼女は――
“勝つこと”を理解している戦術家です」
その言葉に、誰も反論しなかった。
最後に、記録官が羊皮紙を一枚めくる。
そこには、学園時代に付けられていた注記。
――“悪役令嬢”
――“危険思想の一年生”
記録官は無言でその欄を線で消し、
新たな項目を書き加える。
――「王国特別戦技英雄 ヴィオレッタ・アルマリク」
ナレーション的整理。
悪役令嬢というレッテルは、
糾弾されることもなく、否定されることもなく。
ただ――
公式記録から、静かに削除された。
それは断罪ではなく、
完全な上書きだった。




