scene8 魔王の終焉 ― 役目の終了
形が崩れ、静かに消滅
魔王
「……これで、世界は均衡を取り戻す」
「よく理解していたな」
ヴィオレッタ
無言で見送る
→ 敵でも、悪でもなく
→ 役割を終えた存在としての最期 小説化
魔王の輪郭が、ほどけていく。
砕けるでも、消し飛ぶでもない。
まるで――役目を終えた文字が、世界から消去されるように。
魔力の光が、静かに粒子へと還っていく。
その中心で、魔王は最後にヴィオレッタを見た。
怒りもない。
嘲りもない。
ただ、理解だけがあった。
「……これで、世界は均衡を取り戻す」
声はもう、戦場に響くものではなかった。
長い処理を終えた装置が、停止直前に残すログのように、淡々としている。
「よく理解していたな」
「私が“敵”ではなく……」
「条件だったことを」
ヴィオレッタは、何も答えない。
否定もしない。
肯定もしない。
ただ、その最期を――見送った。
彼女の瞳に映るのは、倒すべき悪でも、憎むべき存在でもない。
世界が歪んだ結果、
世界自身が生み出した“調整役”。
役割を与えられ、
役割を果たし、
そして――不要になった存在。
魔王は、微かに目を伏せる。
「……ありがとう」
その言葉と同時に、
最後の魔力が、完全に循環へ溶けた。
何かが終わった、という感覚だけが残る。
神殿は、もう揺れていない。
世界は、正しい呼吸を取り戻している。
ヴィオレッタは、静かに踵を返した。
戦利品も、勝利の実感もない。
ただ――
役目を終えた戦場が、そこにあった。
敵でも、悪でもなかった存在の最期は、
拍子抜けするほど、穏やかだった。
そしてそれこそが、
この戦いが“正しく終わった”証だった。




