scene3 布陣 ― 完全分業型チーム戦
ヴィオレッタは、一瞬だけ目を閉じた。
思考を切り替えるための、ほんの呼吸。
開いた瞬間、視線は戦場全体を貫いていた。
「――配置、いくよ」
声は低く、だが不思議とよく通る。
それは命令ではない。
勝ち筋の共有だった。
「シエラ」
名を呼ばれ、シエラが即座に応じる。
「はい」
ヴィオレッタ
「魔力流だけを見て」
「敵じゃない。“揺らぎ”」
「偏向してるポイント、結界の歪み、
全部拾って私に流して」
シエラは一瞬で理解する。
「……マップ化します」
彼女の瞳が、淡く光った。
魔力索敵は、敵影を追わない。
流れ、濃淡、乱れ――
戦場そのものを読むための索敵。
ヴィオレッタ(心)
(ミニマップ、完成)
「ガイル」
「おう!」
ヴィオレッタ
「前に出ない」
「狭いところ、曲がり角、高低差」
「そこを全部、通行止めにして」
ガイルは笑った。
「近づけさせなきゃいいんだな?」
「任せろ!」
彼は一歩前へ出て、構えを取る。
狙いは撃破ではない。
侵入拒否。
魔王由来の魔力生成体が生まれようと、
その前に“道”が潰される。
ヴィオレッタ(心)
(フロントライン、固定)
「ミリア」
ミリアは、少しだけ緊張した顔で頷く。
「は、はい……!」
ヴィオレッタ
「攻撃はしなくていい」
「バリア優先」
「魔力が跳ねたら、即クールダウン」
「誰も、限界まで使わない」
ミリアは、深く息を吸ってから答えた。
「分かりました」
「守ります」
彼女の魔法は、盾であり、
安全装置だ。
魔力暴走、過熱、反動――
それらを“起こさせない”。
ヴィオレッタ(心)
(リソース管理、完璧)
最後に、ヴィオレッタ自身。
彼女は魔導銃を構えつつ、
足元に小さな魔導罠を配置していく。
射線を引き、
退路を潰し、
中枢へのアクセスラインを切り分ける。
ヴィオレッタ(心)
(私の役目は)
(全体管理)
(そして――)
(終わらせること)
彼女は、魔王を見なかった。
見ているのは、
魔力中枢と、そこへ繋がる“線”。
誰も、魔王を倒しに行かない。
殴らない。
削らない。
競わない。
勝つために必要なことだけをやる。
魔王が、低く笑った。
魔王
「……面白い」
「誰一人、私を見ていない」
ヴィオレッタは淡々と返す。
「ええ」
「あなたは――」
「勝利条件じゃないので」
最終戦は、完全分業型チーム戦へと移行した。
そしてその布陣は、
最初から“勝つ前提”で組まれていた。




