scene10 「本気で生きる」
夕暮れの訓練場は、昼の熱気が嘘のように静かだった。
照明の結界が淡く灯り、橙色の光が芝生を染める。
授業が終わってからずいぶん時間が経つ。
生徒たちはすでに帰り支度を始めており、
広い訓練場には、ヴィオレッタ――蓮の姿だけが残っていた。
彼は貸与された訓練用の魔導銃を手に取り、
ゆっくりとその形を確かめる。
銃身を指先でなぞると、
魔力回路がかすかに脈動し、ひんやりとした刺激を返してきた。
「……すごいな、やっぱこの世界の武器」
蓮は静かに息を吐いた。
今日、授業で見せた実力は偶然じゃない。
これまでのサバゲー経験と、
この世界の魔法技術が合わさった“必然”だ。
でも――
(これは俺の実力の“入り口”にすぎない)
そう思えるほど、蓮の胸は高鳴っていた。
◆ “生き延びるため”だけじゃない
蓮は魔導銃を構えたまま、
ゆっくりと夜空へ向けて目を細めた。
「生き延びるためじゃなくて……」
ぽつりと、言葉がこぼれる。
「この世界で、俺の“好き”を全力でやりたい」
その言葉に、夕暮れの風が答えるように頬を撫でた。
転生した直後は、
処刑エンドを逃れるために必死だった。
生きるために戦う、それがすべてだと思っていた。
だが――この世界は想像以上だった。
魔法と銃の融合。
文化としてのサバゲー。
訓練場の本気度。
生徒たちの目の輝き。
(俺……こんな世界、嫌いになれるわけないだろ)
身体の奥が熱くなる。
心臓が跳ねる。
血が騒ぐ。
「サバゲーの頂点まで行ってやる」
静かな宣言は、誰もいない訓練場に吸い込まれていく。
その瞳は、未来の頂点を真っ直ぐに見据えていた。
悪役令嬢でも、
転生者でも、
ゲームのモブでもない。
ヴィオレッタ=相場蓮は――
“この世界の最強プレイヤー”になるために、生きる。




