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第7話:崖と谷と罠

王国へは狭い渓谷を通過しなければならなかった。


まず先頭を騎馬隊が行く。

渓谷は約3㎞


薄茶色の乾燥した髙い崖が両側から迫る。


こんなところでがけ崩れとかあれば

一巻の終わりだ。


隊長は焦った気持ちで馬を走らせる。


「出口が見えた」

隊長は安堵する。これで山場は乗り切った。

そう思った。


しかし先頭の騎馬が出口さしかかる数百メートル前で、頭上から突然落石が落ちてきた。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴオ――――。


ほんの数秒前まで開けていた視界が一瞬にして消えた。


「全軍止まれ―――」

隊長は大声をあげた。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴオ――――。

続いて背後から音がする。


次は渓谷の入口付近で落石


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴオ――――。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴオ――――。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴオ――――。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴオ――――。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴオ――――。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴオ――――。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴオ――――。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴオ――――。


続き落石は9か所で起こった。


一面は土煙に覆われた。



土煙が落ち着いたとき、隊長は目をうたがった。


騎馬隊は10の小集団に分断され、伝令も、隊長の号令も届かぬ状態となった。


騎馬隊長は、その落石のありかたに

疑問を感じた。

これほど短期間で複数の落石が…


これは罠だ。

そう思った時にはもう遅かった。


上からひっきりなしに落石がやってくる。

馬にまたがった兵士たちは身動き取れず

石工たちが作った罠によって絡めとられていく。


先頭の騎馬隊は

なんとか命からがら落石から逃げれたが

その瞬間

前方から弓矢が…。

止まっても地獄

進んでも地獄


貴族たちが手塩にかけて育てた

子息たちは

自然の驚異と石工の智恵により

その生涯を強制的に閉じられたのだ。


きらびやかな軍装は

戦場で映えることはなく

草一つ生えない

不毛な渓谷で

ひっそりと

赤く染まるのみだった。



二月前―――――――


石工たちは頭を悩ませていた。



どの場所にどの角度で石を配置し固定すれば

どのような形でがけ崩れを起こせるかだ…。


軍師との打ち合わせで

この落石の計略がどれほど重要であるか

彼らは重々理解していた。


石工たちは国中の石工仲間と相談し策を練った。


「この角度だと…あかんな。重みが逃げる」

ごつごつとした指で石を撫で、長年の経験で落ち方を見抜いていく。


なんども思考錯誤を重ね。

二月の間…家族も含め総出で作業を行った。


俺らがこの国を守る。

彼らはそう決意した。


そして今

彼らは騎馬隊の視界の外で

お互いの肩をたたき合っている。


俺らの仕事は成し遂げた。

あとは頼むぞ。


皆がそう思っていた。


―――――――――――

その頃帝国では


同日同刻に亡くなった

2人の葬儀がひそかに行われていた。


この事件は

戦の開始直前という事もあり…。

発言を固く禁じられた。


もちろん気にしなかったものがいなかったわけではない。


ただ上位貴族の子息たちの初陣に水をさす。

そういう理由で

話題にもされなかったのだ。


配下の兵士たちには、有能な者も多かったが…。

別の者の配下に組み入れられた。


もちろん

何も知らされていなかった。


帝国にとって大切なのは

貴族たちの名誉や感情であり

平民上がりの兵士の感情ではなかったのだ。


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