第4話:兵法の教え、民の知恵
軍師はまず帝国の人材について詳しいという男に会うことにした。
「帝国軍の人材をまず全部あげてくれ」
男は帝国軍の人材を紙に書きだしていった。
「かなりいるな…。この中に優秀であるが目立たぬものはいるか?」
「それだと。こいつと…こいつだな。こいつらがいなければ上手く回らない」
「目立たぬか?」
「そうだな。それなりの地位はあるが…。冷や飯をくらっている」
「この2人を処理するには、何人必要だ」
「そうだな。3人ずつだな」
「わかった貴殿。この2人の処理を頼む。6人つける。同日同刻に頼めるか?」
「任しておけ」
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続いて軍師は商人に会うことにした。
「商人殿…。帝国の太鼓を買占め、太鼓職人を雇い、別の国に一時的に隠れることはできるか?」
「それは可能ですが…。なぜそのような」
「兵は太鼓の音で行動を決める。太鼓がなければ、動きは統率が取れなくなる」
「それは妙案にございますな。わかりました。買い占めて、太鼓職人は別の国に一時的に連れて行きましょう」
「わかった。頼む」
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続いて軍師は馬飼いに会うことにした。
「騎馬隊の馬を誘惑することができるとあったが…どういう事だ」
「おそらくですが…帝国の馬は民間徴用馬の割合が多いです。去勢をしてない馬は雌馬を囮に使えば、精鋭の騎馬隊の馬を略奪することが可能でしょう」
「帝国軍の騎馬隊はおよそ1,000だと聞く。その内…民間徴用馬はどの程度で…。どの程度奪えそうか?」
「民間徴用馬は、およそ6割程度でしょう。囮にかかるのは…そのうちの半分くらいでしょうから300くらいはいけるかと。
ただこちらも馬飼い連中が10人いますが…。ロープを外して回る連中がいくらか欲しいですな」
「では40人ほど…手配しよう。では頼む」
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続いて軍師は旅芸人に会うことにした。
「帝国内で混乱を起こすという提案があったが…。
詳しく頼む」
「軍師殿…。
実はですね。
帝国内は今思想が二つに割れておりまして。
一つが盾
一つが鉾
としましょう。
こいつらが争いあって、一触即発の雰囲気なんです。
鉾が主力派で約6割、盾が2割です。
この鉾と盾を争わせれれば、帝国は内戦状態になるだろう。
そういうことです。
これはあっしらが言ったことじゃなく。
帝国内で以前から言われていることです」
「なるほどな。で…争わさせる方法はなにかあるのか?」
「それがね…。あればいいのですが…」
「そりゃ簡単だ。盾に罪をなすりつければいい」
と突然声をかける男がいた。
「お前は誰だ。あーお前は詐欺で捕まったものか」
「へへへ。詐欺は私の得意分野ですわ。
あーいいですか?
私のような下賤なものが軍師殿に口を聞いても」
「気にするな。私も数日前までは農民ゆえ。で…どんな手を打つ」
「うーん。そうですね。
まず…盾の本拠地の誰も使っていない倉庫に忍び込み。
呪術の道具をしかける。
これは呪詛対象を鉾と帝国としたものとする」
軍師の眉毛があがった
「それで」
「それから…旅芸人の皆さんに、真夜中にヘンな動物の鳴きまねをしてもらい。
そして…。これは帝国は呪われているのでは?と噂を流させる。
そして…」
「そして…」
「盾が呪詛しているのを見たという噂を流し…その呪詛の道具を鉾や帝国に見つけさせるのです」
軍師は腕を組みながら
「なるほどな。それで盾と鉾が争う火種ができると…しかし盾が無抵抗な可能性もあるのでは」
詐欺師はほら来たと言わんばかりの笑みで
「ですから…。この呪詛騒ぎは、鉾側の策略によるものだ。という噂を流すんです」
「ほう…。なるほどな。では準備にどのくらいの人がいる」
「そうですね。元盗人と、旅芸人、私と10人もあれば…」
「なるほど…。では任せた」
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続いて軍師は農民たちに会うことにした。
「この帝国は米や水を奪うので…それを先に無くすというのは具体的には…」
「軍師殿。この帝国から王都までの道には30の村があります。
この30の村の民を全員引き上げて…
食料を引き上げ
家をつぶすか燃やす
井戸を石で埋めれば
食料や水に困ります。
人も馬も水が必要ですからな」
「しかし…。それでは君たちの村が…」
「生きていれば。村は復活できる。まー助力は欲しいですが…」
「わかった。帝国を追い払えれば…復興を約束しよう」
「あと村の説得に…。どなたかお偉いさんについて来て欲しいです」
「その任…。私が受けましょう」
と突然王女が声をかけてきた。
「あぁ王女様…。いやしかし王女様自らが…」
「いいえ。私が行くべきです。大事な故郷を一時的にとはいえ…
手放させるわけですから。その責任は重い
私に行かせてください」
「わかりました。王女とお前たちに頼むとする」
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続いて軍師は橋の設計技師に会うことにした。
「橋を壊しやすくする仕掛けができるとはどういうことか?」
「軍師殿。実地でないと…詳しい説明はできませんが。
橋はある部分に細工をしておき。
ある方向に負荷をかけると…。
たやすく崩れます。
たとえばその辺りに油壺を仕込み
外から火矢でいかければ、ほんの10分ほどで
橋は倒壊します」
「なるほど…。それだと分断ができるな…」
「で…。どのような人や道具がいる?」
「そうですね。鳶職人や大工。あとは矢の得意なものがいれば」
「わかった。手配しよう」
軍師の訪問は7日にも及んだ。
軍師は蝋燭の明かりの下、1枚の地図に印をつけていた。
太鼓の買占め 馬の略奪 呪詛騒ぎ 橋の爆破
すべてが、綿密な順に並んでいた。
あらゆる村人、職人、詐欺師までもが、次第に静かに動き出していた。
軍師は静かに口元をゆがめた――すべては、ここから始まる




