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第3話:王女&軍師の決意

王女は自室にこもり

一人考えていた。


王国兵の兵装は深紅であった。


それは勇敢さの色であり

太陽の色であり

魔除けの意味もあった。


戦場を駆け抜ける深紅の兵装は

美しくもあり、恐ろしくもあり、気高くもあった。

そしてそれはこの国の伝統でもあった。


だが、今回は違う―――。


王女は静かに立ち上がると、軍師のもとを訪ねた。


「軍師殿…。兵装を漆黒にかえるのはどうだろうか?」


軍師は少し目を細めた。


「王女がお決めになればよいでしょう」


「いや…そうではない。漆黒に変えることに、なにか不都合はあるかと」


軍師は腕を組んでしばし考えた。


「……費用の問題はあります。

今用意している赤の兵装を染め直すには手間も金もかかる。

それに、深紅はこの国の象徴。

突然の変更に、兵や民が動揺する可能性もあります。

ただ―――黒は夜目には目立ちにくく、潜伏や奇襲には有利です。

この色に何か意味があるのですか?」


軍師の問いに、王女は静かに口を開いた。


「黒というのは。喪に服す側の色じゃ。

つまり―――

彼岸を傍観する色じゃと思うのだ」


軍師は、王女の眼差しにただ耳を傾けた。


「そして…

旅だった魂をおさめる色でもある。

彼岸の瀬戸際でありながら

そちらにはゆかぬ色


…ゆえに我らには、この色がふさわしいと思うのじゃ、

たった300人でありながら、

1万の軍勢と相対する――この狂気。

赤の兵装では、

生きて帰れぬような気がしてならぬ」


王女は、少しだけ息をついた。


「だが――闇をまとい

死者と共に戦うのならば…

1万の兵とて、退けられよう」


軍師は深く息を吐き、表情を引き締めた。


「……王女。

貴女はただの少女ではない。

私は、ようやく腹を決めた。

我が生をこの戦に懸けましょう」


王女は小さく微笑み、うなずいた。


「頼んだぞ。軍師殿。

この戦――我らは、生きて勝つのじゃ」


―――――――――――――――――

軍師は思い出していた。

なぜ…

農民をやっていたのかを。


実は彼は将来を有望視された青年だった。

現将軍と共に…

この国を背負う人物になるはずだった。


しかしその夢は…

ある事件によって

立ち消えたのであった。


そして…。

時は過ぎ

思わぬ形で

本来あるべき姿に

彼は落ち着いていた。


彼は思った。

書類の山に埋もれ

彼は思った。


結局…私は

農民にはなれなかったと…。


…逃げた先で手にした穏やかな暮らし。

それでも、剣を置いたまま生涯を終えることはできなかった。


そして

この戦さ…

こそが自分の生涯を

賭ける最後の大勝負だと…。


彼はそう思うのであった。


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