第2話:軍師は農民
男は田舎の村で、たった1人農家をして暮らしていた。
将軍はその男の同級生だった。
男の家の前につくと将軍は
「私が説得しに行きます」
と言った。
王女は
「私も同行すると言った」
「よう元気か!」
「なんだお前か…。なんのようだ」
「あの実はな…。俺は将軍になったんだ。で…お前を軍師に引き入れにきた」
「帰ってくれ。俺はこれから忙しい」
男は二人を追い出そうとする。
王女は
「私はこの国の王女。あなたの力を借りたいのです」
「王女様…これは失礼を…しかし私には荷が重すぎる」
すると王女は
「では私は諦めよう。しかし貴殿に1つ問おう。この状況…君であればどう勝つ?」
男は深く息をし、近くにあった紙に戦略を書き連らねていった。
目を少年のように輝しながら…
それをみて王女と将軍は目を見合わせて笑った。
「この男を連行せよ」
「何をする」男は言った。
「そなた…このままであれば半年後はここにはおらんぞ。
帝国にこの国を蹂躙されて。
しかし戦えば勝ち残る可能性はある。
貴殿の才能でな。
貴殿を今から連行する。
そして考えろ。
戦うか?諦めて終わるか?
牢獄の中で終えるか?
帝国に勝てば貴殿をこの国の宰相にしてやろう。
貴殿は戦いの天才だ 貴殿も自覚しておるだろう。」
「俺はなにも罪を犯していない」
「才能を腐らせるのが罪だ。それが、貴殿を投獄する理由――この国を救うためだ」
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家から連行される前――
男はカバンにいくつかの道具を詰めていた。
その表情には憮然としたものがあったが、口元には微かに笑みが浮かんでいた。
王女と将軍、そしてその男は一台の馬車で王都へ向かっていた。
「王女様…。軍事に明るいようですが、どこで学ばれたのですか?」
「本さ。孫子の兵法を読んだだけだよ。」
「孫子か…。あれは良い本だ。兵法書でありながら、戦を否定している。それが私は好きだ」
「ほう。おもしろいことをいう。戦は嫌いか?」
「ああ。甥が先の戦で死んだ。戦争など、できることなら遠ざけたい」
「帝国に恨みはないのか?」
「あるさ。でも…奴らも命懸けだ。それを忘れたら、戦に勝てない」
「なるほどな。じゃが…今回の兵たち299人はみんな帝国を恨んでおるぞ」
「恨みは戦う強い動機になる。でも作戦を考える側は恨みはできるだけ抑えないと判断を誤る」
王女と将軍は目を合わせて笑う。
「やはりな。貴殿は軍師向けじゃ。今日から我が国の軍師じゃ」
「待て、勝手に決めるな。私は引き受けるとは言っていない」
「軍師殿…。貴殿には荷が重いか?」
「それはまだ判断できぬ。299人の顔も、帝国軍の構成も知らぬうちは何も言えん」
「…やはりおもしろい男だ。期待しておるぞ軍師殿」
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「では軍師殿。『敵を知り、己を知れば百戦危うからず』というが…まず何から始める?」
「そうだな。まず“味方”を知りたい。できれば――戦う以外に何ができるのか、そこを重点的に知りたい」
軍師は少し考えて、ぽつりと続けた。
「……299人に一人ひとり話を聞くのは時間がかかりすぎる。だが、いい方法がある」
「ほう?」
「皆を一堂に集めて、1時間で“戦わずして勝つ方法”を考えさせるんだ。
人数は10人でも20人でも構わない。重要なのは、“自分の経験や職能”をもとに、敵に損害を与えられる方法を出すことだ。
たとえば“崖の上から石を落とす”でもいい。
木こりなら“丸太を転がす”、薬師なら“毒を仕込む”、猟師なら“罠を張る”。
ルールは一人一案以上。内容の善し悪しは問わない」
王女が目を細めて頷く。
「面白いな。続けて」
「案を出せば褒美。採用されればさらに上乗せ。そして職歴・趣味・特技もできるだけ詳しく書かせる。
これで戦える人材、作れる人材、知恵を出せる人材がすぐにわかる」
将軍が小さくうなる。
「さすが軍師殿…! では、早速段取りを整えましょう」
「頼む。俺は全員の回答に目を通したい」
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こうして兵たちは広場に集められた。
「褒美が出る」とあって、老兵たちは皆どこか嬉しそうな顔をしていた。
10人の書記が各班に配置され、それぞれが発言・経歴・特技などを記録していく。
木こりは「森の道は俺に任せろ」と豪語し、漁師は「毒魚のさばき方なら」と語った。
旅芸人は「人を騙す演技には自信がある」と笑い、調理人は「保存食にすれば半年もたせられる」と力強く言った。
軍師はそのすべてに目を通しながら、静かに頷いた。
(この299人――ただの寄せ集めではない。きっと、勝てる)
王女はその横顔を見つめながら、小さくつぶやいた。
「…やはり、彼に頼んで正解だった」




