プロローグ
ああ、やっぱり姫花は負けヒロインだったかあ……。
コンビニで少年漫画の週刊誌を立ち読みしていた私はため息をついた。
私が読んでいる漫画は『冴えない俺とバラ色の青春』というハーレム系ラブコメ。通称『俺バラ』だ。
別に好きで読んでいたわけではない。
数年前、アニメを見てからどハマりした漫画があって、その漫画が掲載されている少年漫画の週刊誌を買うようになった。せっかくだし、どハマりした漫画だけではなく週刊誌に掲載されている他の漫画にも目を通した。『俺バラ』はその中の一つ。一応アニメ化もしているみたいだけれど、アニメの方は見たことがない。
メインヒロインの一人である苺谷姫花が可愛くて読んでいただけ。
主人公の原田陽太は正直好きになれないキャラ。他のヒロイン達も可愛いけれど何だか癖が強すぎて好きになれなかった。
◇◇◇◇
私は現在大学院修士課程二年。生物学系の研究室に在籍している。
現在は六月。絶賛就職活動中。
研究室の同期は全員内定を取っているから私はかなり焦っていた。
だけど、焦ってもどうにもならない。今日は初めての最終面接。緊張しながら私は面接へ向かっていた。
その途中、お茶を買いにコンビニに入ると、雑誌コーナーにある少年漫画の週刊誌目が行った。
『冴えない俺とバラ色の青春、堂々完結!』
週刊誌の表紙にそう書かれていた。
へえ、『俺バラ』完結したんだ。
どハマりした漫画が完結して以降、少年漫画の週刊誌を買っていなかった。
そして立ち読みしてため息をつく結果になる。
推していた苺谷姫花は見事に負けヒロインだった。
……まあ、序盤に主人公と両片思いの時点で何となく負けヒロインフラグは立ってたけどさ。主人公は好きになれないし、姫花があんな奴とくっつかなくて良かったと思えば……。いや、でも姫花はやっぱり幸せになって欲しかったなあ……。
私は再びため息をつく。
というか、姫花ももったいないよ。あんなに可愛いんだから人生イージーモードじゃん。私が姫花なら、主人公なんかに青春捧げずイケメンな彼氏を作るけどなあ。
そう思っているうちに、電車の時間が迫っていた。
私は急いでお茶を買ってコンビニを出た。
◇◇◇◇
駅に着くと、電車が来ていた。
私は急ぎ足になる。
私はようやく慣れてきたパンプスで階段を降りる。
しかし、焦って足がもつれてしまう。
「うわっ!」
思わず声が出た。そして次の瞬間体は一瞬宙を舞い、まるでスローモーションのように地面が迫って来た。
頭と体に強い衝撃が走り、視界が上下逆転した。私は何が起きたか理解出来ず、ただ視界はぐるぐる回るだけ。
ようやく視界が落ち着いたと思うと、意識が朦朧とした。
音が消えていく。周囲の人達が何か叫んでいるみたいだけど、何を言っているのだろう?
自分の呼吸さえも、どんどん遠くなるように薄れていく。ただ、暗闇が広がる。体の重さを感じない。思考もぼんやりして来た。
「最終……面接……」
その言葉すら、闇に吸い込まれるようだった。
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